GRAVI

SANWA SUPPLY
GRAVI上からGRAVI上からGRAVI上からGRAVI上から
型番
MA-TB181BK,400-MATB137
MA-WTB182BK
MA-BTTB183BK
400-MAWBTTB138
操作球径
44㎜
ボタン数
5
接続方式
有線接続
2.4GHz独自無線
Bluetooth5.1×2
2.4GHz独自無線×1
Bluetooth5.1(BLE)×2
給電方式
USB有線給電
単4電池×2
単4電池×2
単4電池×2
読取精度(CPI)
600
800
1,200
1,600
600
800
1,200
1,600
600
800
1,200
1,600
1,000
1,600
2,400
保証期間
1年

オーソドックスな右手用フィンガー型。多くの人が待ち望んだ形なのに不在のままで幾星霜。実は相当に老舗なトラックボール販売実績を持つサンワサプライさんの秘蔵っ子GRAVIは、果たしてその待ち望まれた機種となったでしょうか。

外観を確認したい方は幸塚名物全周動画でぐるっと全体をどうぞ。ボタン部の色が違うやつが国内版、そうでないやつが直販専売版です。もうひとつは入手2週間後に思ったことを取り止めもなく喋り倒している配信です。大変お聞き苦しい内容で恐縮ですが興味のある方はどうぞ。ついでにチャンネル登録や高評価等頂けると幸塚感激します。

定番キタコレ感に心躍る

GRAVI 幸塚評

GRAVI 斜め前方から

サンワサプライさんの新型トラックボール。ペットネームはGRAVI。相変わらずサンワさん自社製品情報ページや販売ページなどでペットネームを使用していませんが、何故なんでしょうね。でも間違いなくグラヴィだそうです。BT版をパソコンに繋いだらそう表示されます。名前を取り上げるってあーた湯婆婆でもあるまいに。とにかく、いちいち型番で呼んでられません。GRAVIです。

同時期にデビューした3機種それぞれペットネームがGRAVI、NOVA、LUNAとなっており、サンワユニバースって感じでしょうか。中でもGravityが由来であろうグラヴィは確かに重力に魂を引かれた旧人類向けのように感じられるかも知れませんが、決してそうではなく普遍的な形と呼んでよさそうです。

GRAVI 左前方から

トラックボールに興味を持った人に最初に薦める機種ってなかなか難しくてですね。一般的な製品として私が考えた場合、5ボタン、スクロールホイールつき、各種無線接続に対応し、操作球は大きすぎず小さすぎない40㎜台。こんな感じだと思うんですが、GRAVIは、少なくともスペック上ではこの条件を満たしています。

探求者の希望

入門用として手が大きい人にも小さい人にも相応に扱いやすく、ポインティングデバイスに対して多くの人が求めているであろうスペックを過不足なく備えていると目されたかつてのトラックボール群の中に、Microsoft社が販売していたTrackball Explorerがありました。後継の登場がずっと待たれていたにも関わらずだーれもそこに手をつけないまま販売終了からおよそ15年。長い空白と放浪の果てに、発表時は少なくとも見た目はよく似た機種として「Trackball Explorerの後継機足り得るか」と、単なる新機種発表時とは違う一種異様な熱量で期待を寄せられていたGRAVI。

私自身が試した限り、決して同じトラックボールではなく結構違う点もある一方で、操作感覚に色濃い面影を感じることも多々あり、なかなか絶妙です。ただこれ、私自身がそんなにTrackball Explorerを愛好していなかったこと、また、愛好家間でもどこに魅力を感じているかはおそらく人によって様々なので、究極には実際に試してもらった上で探求者それぞれの感想があると思いますが、web上で目にする限りの、Trackball Explorer愛好経験者がGRAVIを入手して試した感想は、概ね「これでよし」「よくやった!」という反応のようですし、ぼちぼち店頭にデモ機が置かれていた等の話も耳にしますので、購入前に試す機会に恵まれることもあるでしょう。このへんは実店舗での販売も行われているモデルの強みでしょうね。

TBEとGRAVI

冒頭にも述べたとおりGRAVIは誕生前から色々と期待を背負っていたのですが、少なくとも、Trackball Explorer愛好家への新たな選択肢の提示、という意味では一定の、そして過去最高の成果を挙げたんじゃないかと思います。突如として愛機の系譜が途絶え、決して頑丈ではない残存機の寿命に戦々恐々とし、ストックが尽きて寄る辺を失った右手が虚空を彷徨う絶望は、厳冬期の到来を肌身に痛感した人間には決して他人事ではありませんでした。この成果は本当に、素直に良かったと胸を撫で下ろしています。

多様なラインナップ

44㎜球、5ボタンはすべて静音スイッチ。接続法式は機種別で有線版(181)、独自無線版(182)、Bluetooth版(183)の3種が日本国内版として10月の末に登場しました。BT版は2チャンネル搭載しているので2つの端末にペアリングして切替使用が可能です。これらの機種はサンワサプライさん御本家の製品ですので、全国の小売店、店頭などにも並んでいると思われます。

一方で、海外ではグローバル版として見た目と機能が少し違うモデルが販売されていました。あくまで海外版で日本では購入不可能でしたが、12月半ばに日本でもサンワサプライさんの直販系サイトで販売が始まりました。中身はグローバル版と同じだと思いますが、「直販専売モデル」として、店頭には並ばずサンワさんの直販系サイトのみでの取り扱いのようです。

GRAVI 無線接続モデル
型番MA-WTB182BKMA-BTTB183BK400-MAWBTTB138
外観MA-WTB182BK 上からMA-BTTB183BK 上から400-MAWBTTB138 上から
接続方式2.4GHz独自無線Bluetooth5.1
(Classic)
独自無線&Bluetooth
(BLE)
解像度600-800-1200-1600/cpi1000-1600-2400/cpi

発売前からなんでそんなややこしいことをと思っていましたが、実機が登場してみると事前に想像していたより一段ややこしさが増しており、ダイレクト専売モデルたる400-MAWBTTB138は、なんと接続方式が2.4GHzの独自無線とBluetoothの両対応という豪華モデル。なのに価格はお安いときて、おいおい。冗談だろと言いたくなるラインナップの捻れっぷりです。

冗談だろ仕様はまだあります。国内版、BTのみ型である183はBT Classic。直販版の138はBluetooth Low Energyなので、この点もおそらく電池の持続時間では直販版の方が優秀ではないかと思います。なんでこんな不思議な仕様になっているのかは私にはまーったくわかりませんが、とにかくそういうことのようです。

基本的にはダイレクト専売モデルのほうがだいぶお得な価格設定ですので、そっちを軸に購入検討することになると思います。違いはカラーリングと、国内モデルは解像度が4段階(600-800-1200-1600/cpi)、直販専売モデルが3段階(1000-1600-2400/cpi)で、ここだけは国内モデルの方が選択肢が多いですが、解像度の調整はOS上でも行えますので、やはり直販専売モデルを基本で検討して良いでしょう。安いし。接続は独自無線とBT両方行けるし。私は解像度600が具合良かったんでそこは国内版の方が好きなんですが、上手く行きませんね。

ただ、ボタン部分の色が違う国内版は、色だけでなく表面処理も変えてあり、またホイールの感触も微妙に違って国内版の方がより静かです。後段に比較動画を掲載していますので気になる方はご参照ください。

なので、本当に細かい点を見ていくと国内版の方が良い点もあるんですが、価格差と接続方式の差を埋められるかと問われれば、うーん。私は国内版のほうが好きですし購入も済ませているのですが、国内版と直販モデルが同時に発売されていたら、相当悩んだだろうと思います。

あくまで参考ですが、私の使用環境は物理27インチ、2560*1440ピクセルで、この解像度上では600cpiで具合よく感じていますが、もっと広い解像度だったり、あるいはマルチモニタ環境だったりする場合はもう少し早いほうが(早くても)良い、という話も耳にします。ご自身のモニタ環境が広大であれば1000cpiスタートの直販版のほうが良いケースもあるかも知れませんね。

一方で有線版は性能に違いがありませんので、見た目の好みや、純粋に価格差などで選んで良いでしょう。価格差が詰まっているのであれば、私なら国内版を買います。

GRAVI 有線版
型番MA-TB181BK400-MATB137
外観MA-TB181BK 上から400-MATB137 上から
接続方式USB(Type-A)有線接続
解像度600-800-1200-1600/cpi

モデル別おすすめ

以下の表、一応上から順に私がお薦めする順番で並べています。ただまぁどこを重視してどこを妥協するかは人それぞれだろうと思いますので、これが絶対というわけでもありませんけどね。無線タイプは基本的には直販版優先で考えていいとは思いますが、細かい点で悩みどころも多いです、はい。

外観型番CPI価格静かさ電池寿命
400-MAWBTTB138 上から400-MAWBTTB1381000cpiから3段階
MA-WTB182BK 上からMA-WTB182BK600cpiから4段階
MA-BTTB183BK 上からMA-BTTB183BK600cpiから4段階
無線派の人

無線派の場合は、直販版の138を基本に検討することになると思います。価格は安いわ無線は独自とBT(しかもLE)両方対応しているわで正直四の五の言わずこっち買っとけと言い切れれば良かったんですが、直販版の138は国内版の182、183と比較して解像度が少し高め(カーソルスピード速め)なのと、ホイールが結構音がするという特徴があります。と言ったって、国内版のほうが妙に静かってだけで別に普通のホイールですよ。

大画面高解像度や複数モニタを接続しているような方であれば解像度が高い点は気にしなくて良いでしょうから、あとはホイールの音を許容出来るか次第。音は後段で比較動画を挙げてますのでご参照ください。クリック音は差はないと言って良いです。

また、国内版のBTのみ型(183)はBTがClassicなので連続稼働時間に不安を抱えています。BT接続を検討している方は直販版か独自無線版が安心です。私は知らずに国内版BT型買いましたけどもね!


有線派の人

有線派の場合は、機能的にはホイール回転音の大小ぐらいしか差がありませんのでその点と、あとは見た目の好みでお好きな方をどうぞ。

外観

国内版

右手用のフィンガー(人中薬小指)制御トラックボール型で、極めて標準的な形と言って良いでしょう。赤い操作球と、黒い本体にボタン部だけが灰色(銀色)のツートンカラーになっています。私はこれ、手本にしたであろうTrackball Explorerのカラーを反転させたイメージじゃないかと思っていますが、少し使っていると銀の塗装が剥げたTEから考えるともっとしっかりした処理だと思います。塗装じゃなくてコーティングかな。表面処理はサンワさんの130と似た処理で、造ってるとこも同じじゃないのと思ったりしますが、マット処理でサラサラした手触りもよく、決して安っぽさは感じません。

GRAVIのパッケージ
外箱は同社製179などと同じもの
GRAVIのパッケージ
おっ……おう
GRAVIとTrackballExplorer
外装の色を反転?
GRAVIとMA-BTTB130BK
外装部の表面処理は同社製130と似ています

直販版

サンワさん直販限定版を購入した場合、うちのサイトでもちょいちょい登場していますが写真のどシンプルな箱に納められ、発送されてきます。私、この箱好きなんですよね。まぁ店頭での販売もあるでしょうから全部こうするわけにも行かないでしょうけど。

GRAVI 直販版のパッケージと本体
シンプルな箱にはサンワさんのグローバル版ロゴ
GRAVI 直販版本体後ろ側から
直販版本体には「GRAVI」表記あり

シンプルな白い箱との対比と私の稚拙な画像処理のせいで、本体は国内版と比べても余計に黒々して見えるかと思いますが、実際はボタン部以外同じ表面処理だと思います。なので手を置いた感覚はまったく同じ。ボタン部だけは表面処理が違って、国内版はツルツルした表面処理で灰色のボタン部品、直販版は本体と同じサラサラコーティング部品そのまんまです。「そう意識した上で指先をさすさす」と擦れば違うような気もしますが、うん。正直感触の違いはわかんない。ただ、ホイールの中心部も国内版はボタンに合わせてシルバーに、直販版も合わせて黒い部品が採用されているので、国内版はちゃんとツートン感があるし直販版は真っ黒ボディ感が損なわれずまとまっている。うーん。ちゃんとしてるね。サンワさん、どうしちゃったんだだろう。

いずれにモデルにせよ、およそ目で見た通りに手を置けばもうそれでスタンバイOKですし、ここで悩むことはあまりないでしょう。極めて普通。極々自然。でもそんな普通の形がこれまで存在していなかった事実に、右手用のフィンガー型トラックボール界が背負っていた業のようなものも感じます。

ボタン配置

ボタンと機能の初期設定、配置は以下の図の通りです。通常、フィンガー型トラックボールは右クリックを薬指か小指辺りで押すように配置されていますが、GRAVIは標準の状態では左/中/右クリックをすべて親指で制御するように配置されています。

GRAVIの初期ボタン設定
ボタン類の初期設定

先ほどから名前が出てくるTrackball Explorerと、その先代に当たるIntelliMouse Trackballが左右ボタンを親指で制御する形でしたので、それに倣った……というか、当時のMicrosoftの人間工学専門家だったヒュー・マックルーン氏の思想を、揶揄する意味でなく正しくリスペクトし、受け継いだと見たほうが私の気分がいいのでそう言います。正しくリスペクトしたものです!

この配置は、KensingtonやLogiのフィンガー型トラックボールに慣れている人間にとっては「なぜ?」なのですが、初めてフィンガー型を使う人、これから慣れて行こうとする人にとっては「サム(親指)でボタンをクリック、ドラッグしながら、操作球の制御はフィンガー(人中薬小指)側で行う」と、二つの操作を同時に行う場合でも指の役割分担が明確で習得しやすいかも知れません。私はKensington育ちなので薬指小指を扱うのにも慣れていますけど、スクロールホイールつきトラックボールの使い方を覚える導線として冷静に考えてみると、Microsoftの主張にも理がある気がします。ま、そりゃね。OS作ってるとこだし、今はどうか知らないけど昔のWindowsは基本的に左右の2つのボタンで制御するOSだったよね。

IMT、MSTE、GRAVIの親指側ボタン配置
手前がIntelliMouse Trackball

「戻る」「進む」は基本的に1回押すだけですが、メインの左中右ボタンは、「押す(クリック)」「2回連続で押す(ダブルクリック)」「押しっぱなしの状態でポインタ移動(ドラッグ)」等々、必要とされる操作がだいぶ複雑ですものね。既に薬指や小指でのボタン制御に慣れている人は、つまり相応にPCを扱った経験を持っている人でもある=まったくの初心者ではないので、自分が使いやすいようにボタン機能を変更すれば良く、そのスキルも備わっているでしょう。まぁそのひと手間が面倒というのもわからなくはないのですが、ここは初心者に配慮された仕様と見るべきだと思います。なんせ前世紀に考案されているはずだもんね。

自分は遥か昔にその地点を後にし、通ったことすら忘れてしまった。あるいはそもそもの道が違ったとか、現在に到る道ってな人それぞれでしょうけど、幹線道路になれず風化に任せて痕跡も消えかかっていたが、ひょんなことから復活したと。こういうのは本当に面白いです。いつの時代にだって初心者は居るのですから。あたしゃ当時のことも覚えてはいるので「結果、こんな世の中になりましたよ」みたいな感慨もあります。老人の特権ですが皆さん生きてりゃそのうち嫌でも経験しますとも。ええ。

44㎜球

近年の感覚ではかなり大きめの球になると思います。44㎜球。球が大きくなると精密な操作に強くなるのに加えて「転がしている」気持ちよさが発生します。トラックボールの中毒性に関係しているであろう、球を転がす気持ち良さを味わえる球径と精度、そして必要十分な性能を持っていると感じています。球のデカいは七難隠すと昔から言われていますし。

GRAVIとM575の操作球
GRAVIの44㎜球(左)とM575の34㎜球(右)

静音スイッチ搭載

近年流行し、この先はこれが主流になる気もしている静音スイッチ。GRAVIはこの点もキチンと抑えてあり、また、一部だけ静音というようなこともなく、きちんと全ボタンが静音化されています。

またこの静音スイッチ、他機種では、静音性と引き換えなのか反発力が弱いスイッチも散見されるのですが、GRAVIに採用されているスイッチは、静かだけど押し込んだ際のクリック感は比較的ちゃんと存在していて、かつ適度に反発もしてくれますので、押し心地悪くないですよ。私は古い人間ですので感触のハッキリしたマイクロスイッチの方が好きですが、GRAVIのスイッチは、これまで触った静音型トラックボール各機種に採用されていたものの中でも一番良いと感じます。ここは地味ですし実際に触ってみないと判らない点ですが、ボタン面が大きくてそもそも押しやすい点も含め、静音性と感触の両面、現行の静音型トラックボールの中では一番ではないかと思います。静音型トラックボールを探している方にもお薦め出来ます。

動画はGRAVI国内版とグローバル版(直販版)のホイール音の違いを主に聴いてもらおうと思って撮影したものです。左クリック音が違うように聴こえるかもですが、撮影してみたらこんなふうに写ってた感じで、実際は違いはわかりません。最後にM575のクリック音を比較用に出してますが、一応はほぼ同一環境で撮影したものですので、GRAVIのクリック音がどれほど静かか理解して頂けるかと。

ごく普通のスクロールホイール

本体側面には極々普通の上下スクロールホイールが搭載されており、押し込めば中クリック(静音ボタン)。軽く回るホイールで、ノッチの感触は弱めですがちゃんとあります。本当に普通なんですが、こう、どいつもこいつも癖をつけないと気が済まないような機種ばかりだった中では、普通なのが個性に感じてしまう。いいですよ。普通って本当に素晴らしい。

GRAVIのスクロールホイール

無線接続対応機の接続方法など

日本版GRAVI、無線接続方式の機種は2つ、独自無線(WTB182)、Bluetooth(BTTB183)で、それぞれに対応したモデルが発売されています。独自無線版はドングル1つで1つの接続先ですが、Bluetooth版は2つのチャンネルが選べます。

一方、直販版GRAVIは独自無線とBluetoothの2wayな上にCPIの設定も違うおかげか、裏面の設定スイッチ配置に違いがあります。以下、そのスイッチ図。

GRAVI国内BT版 裏面ラベル
日本版は裏面ラベルにボタン機能の記載あり。地味に親切で、さすがナショナルモデルとでも言いましょうか。BT*2搭載で2つの端末とペアリングが可能です
GRAVI裏面
日本国内BT版裏面
GRAVI国内BT版 裏面ラベル
直販版はBT*2、独自無線*1なのに加えて専売用とグローバル用で型番も2つ併記、サンワさんのロゴも2つ掲載等々でその分記載内容が大量。ボタン機能も記載がないので初見では迷いますが、まぁ触ればわかります
GRAVI裏面
直販版裏面
GRAVI裏面

操作球を押し出すための穴も大きく取られていますので、操作球を取り外しての掃除は簡単。

製品には動作確認用の単四電池も付属しているので購入後すぐに使えますが、乾電池は災害対策としても持っておいた方が良いと思いますので、お持ちでない方はこの機会に単3と単4をそれぞれひとパックづつぐらい購入して、トラックボールを酷使することで消費しながらの備蓄に努めてはいかがでしょうか。

ひみつの減速機能

直販モデルが発売されたことで公になりましたが、GRAVIには最近トラックボール界でもちょいちょい見かけるようになった、減速モードが搭載されています。精細モードなんて言われたりもしますね。呼び名は色々ですがつまりカーソルスピードが遅くなるモードです。国内版にもあるよ。

GRAVI国内BT版 裏面ラベル

方法は上図の通り。サンワダイレクトさんで掲載されている図とは逆になっていますが、うちの個体はこうなっていました。どっちが正しいか白黒つける気はありませんのであくまでうちの個体ベースの話ですが、マニュアルにも一応こう書いてあると思うでよ。ボタンがわかりづらいけど。

GRAVI評 まとめの前に

2022年の半ばぐらいから、メーカー機種を問わずトラックボール全般で、いわゆる「初期不良」的な個体に当たることが増えました。当初はどうせあたしゃ悪い星の下に生まれてますから程度に考えていましたがあまりにも不全個体が続くのでさすがにおかしいと思い、他のトラックボーラーにも伺ってみたところ、だいたい似たような不具合を引いている。これはおそらく生産工場たる中国での、コロナ禍下の混乱が影響しているだろうと思うに至っています。

この傾向は年が明けて2023年1月もまだ続いているようで、日本国内での発売を控えている機種の事前情報などでも、22年中盤以降に頻発したのと似通った不具合報告が上がっているのも目にしています。

GRAVIもその例外ではなく、不良個体とおぼしき機種を引いた人の評判は当然芳しくなく、一方で問題のない個体を引いた人の評判は絶賛と、両極端になっているように見受けられます。私も「問題のない個体であれば文句なく良いトラックボール」と考えていますが、不具合個体を引いたこともあります。以下の動画はサンワダイレクトさんに交換を依頼したGRAVIの開封の様子を配信したものです。

もし購入を検討される方は「平時より不良個体を引く確率が高い」と考えておいたほうが良いと思います。これはGRAVIに限った話ではなく、22年に生産された個体全体に及ぶのではないか。とりわけ新機種であればほぼすべての可能性もあると思います。

GRAVIの場合であれば、届いた個体の、特に操球感に多少でも違和感を覚えるようであれば、サンワサプライさんへの相談をお薦めします。というか「場合によっては交換返品を申請する」ハラを決めた上で購入を検討したほうが良いと思いますので、何かあった場合の返品交換手続きが容易な環境での購入、サンワサプライさんの直販系やAmazonなどでの購入をお薦めします。

そんな状況ですので、私も昨年夏以降は購入した各機種の検証や交換手続きに追われました。でもま、仕方ないですよね。100年に1度の疫病流行下に世界秩序の再構築みたいな雰囲気も漂う中、交換を経て良個体が入手できた時には、普段とはまた別種の感慨と思い入れが生まれます。ずっとそんな状態では困りますが、明けない夜はないでしょう。トラックボール界自体が、そもそもそうでしたから。

GRAVI評 まとめ

GRAVI。発売前から色々な意味で期待大な機種で、発売日も不明な段階からギャーギャー騒いでいたおかげで海外のファンからも問い合わせが来るような状況だったところに、昨今の不安定な世界情勢も影響してか、発売も延期に次ぐ延期で相当ヤキモキさせられましたが、結果、十分期待に応えてくれた機種になったと思います。プレッシャーを跳ね除けて結果を出すのは、そうでない状況よりもはるかに難しいと思うのですが、GRAVIさんはそれを成し遂げてくれちゃった感があります。古くから淡々とトラックボール販売を続けたサンワさんの、これまでの経験が結実した機種と言えるかも知れません。

GRAVI 直販版と国内版

これと言ってどこかが突出しているわけではないのですが、全体的にとてもよくまとまっており、トータルで見た完成度で突出してウサギとカメ的な寓話も頭を過ぎります。一般的な用途ではこれで不満が出ることもまずないでしょうし、これで不満が出るならその用途は逸般。伝統的な形を踏襲しつつ近代的な機能も盛り込んで、過去の有名機の安易で単純なコピーではなく、個人的にはGRAVIのほうがだいぶ良くなっていると感じます。2022年の新型フィンガートラックボールとして見てもまったく恥ずかしくない出来で、世のフィンガーボーラーはとりあえず買っといても損はない機種でしょう。サンワさん本当にありがとうございますと言いたい。

のみならず、初心者さんに入門用としても検討していただけるトラックボールになっていると思います。標準的な5ボタンマウスから移ってくるとしても、機能はひとつも失わず、それなりに大きな操作球で転がすトラックボールならではの操作の楽しさ、気持ち良さも味わえますし、人差し指、中指も動員して扱うことで精細な操作も(もちろんそれには多少の習熟は必要ですが)可能です。また、静音スイッチの出来も、感触を追えば音が出るし、音を気にすれば感触が悪くなると相反するややこしい世界なところ、GRAVIのボタンの静音性と感触のバランスの良さは特筆して良いでしょう。

その他、耐久性を測るにはもう少し時間を要しますし、発売早々に公式ユーティリティの公開が停止されるなんてこともありましたが、発売からおよそ1シーズンが経過した現在の見立てとして、問題のない個体であれば、右手用フィンガー型トラックボール2020年代の選択肢、筆頭候補だと考えています。

ただ、ですね。最後にもう一度繰り返しますが、どうも話に聞く限り初期不良個体がそれなりに存在しているようなので、通常の個体であれば文句なしのお薦め機種だけど……。これが事実なら現時点では初心者さんに「検討してもらう」のはいいとしても、手放しでは薦めにくいんですよねぇ。初期ロットあるあるな気もしますが、サンワさんにはそのあたり製造出荷や輸送時のチェックとケアを強くお願いしたく。

設計時に想定した性能が出ている個体であれば、間違いなくおすすめの機種です。が、まぁ。なんでしょうね。色々と風雲急を告げっぱなしな世界情勢の良くない影響も受けている気がして、不遇の機種にならないといいんですが。本当にいいトラックボールです。多少の手間を覚悟してでも入手する価値はありますよ。

GRAVI 斜め後方から
購入前の段階で色々と注釈がついてしまったGRAVIさんですが、それでも「いいよ! いいトラックボールなんだよ!」と声を大にしたい機種でもあります。悪いのはコビッドナインティーンさんでしょう。繰り返しになりますが、無線版なら上の138を中心にしてご検討を。有線版なら137、181どっちでも好きな方で良いですが181のほうがホイールが静かです。

  •  
  •