Expert Mouse(EM7)

Kensington
  • Expert Mouse 上から
    型番
    K64325
    操作球径
    55㎜
    ボタン数
    4(6)
    接続方式
    USB(有線接続)
    給電方式
    USB給電
    保証期間
    5年
  • Expert MouseWireless 上から
    型番
    K72359JP
    操作球径
    55㎜
    ボタン数
    4(6)
    接続方式
    2.4GHz独自無線
    Bluetooth
    給電方式
    単3電池*2
    保証期間
    3年

かつて、トラックボールの代名詞的イメージはこのExpertMouseシリーズが担っていました。その現行品、前身のTurboMouseから続く歴史あるExpertMouseシリーズの7代目、通称「EM7」。2020年12月現在も現役で販売されています。

最近はトラックボールといえば親指型のほうが一般的でしょうし、ボール内蔵のマウスがほぼ絶滅した今となっては「マウスひっくり返してボールを直接触って動かすもんよ」という説明も通じにくくなりましたが、パーソナルコンピュータ黎明期から存在する大玉左右対称型トラックボールです。名前こそ「マウス」ですけど。

Say hello to Trackball.

EM7の発売は、確か米本国では03年ごろだったんじゃないかと思います。日本で発売されたのが翌04年。そこから数えても16年ですか。Marbleさんには及ばないにせよ、ロングセラーになりましたね。

EM7は、マウスも含めた多くの入力機器に使われる技術が様々登場しては変化していた過渡期に世に出たトラックボールだと私は考えています。ExpertMouseシリーズ史で考えても、EM6まで続いたベアリング支持機構から、操作球表面の模様を直接読み取る光学式エンコーダ&人工ルビー支持球という21世紀型へ大転換された機種でした。

とはいえ、何もかもが発売当時のままというわけではなく、細かく改修も行われており、2016年に新・無線型(独自無線&Bluetooth)が発売されたことで、EM7としてはもう完成し尽くしていると思います。通常、この手の製品はマイナーチェンジなどというまどろっこしいことはせず、改良即新モデルへ移行するものだと思うのですが、まどろっこしい道を敢えて歩んだのはKensington社製トラックボールの、ひいてはパーソナルコンピュータ神話の時代から続く旗艦機だからなのでしょうか。日本では未発売に終わりましたが、本国アメリカでは独自無線版(レシーバが小型マウスぐらいあるやつ)やBluetooth版(現行機とは別種の)も発売されていたように記憶しています。記憶が間違いでなければ、ここまで4〜5種類のEM7が存在したことになります。あ。そういえば一時期は気が触れたとしか思えないようなカラーバリエーションも販売されていましたね。

『EM7としてはもう完成し尽くしている( ー`дー´)キリッ』なんてエラソーなこと言ってますが、20年後半辺りにまたマイナーチェンジ的改修が施されたようで、内部部品の見直しや操作球色の変更等が行われたようです。詳しくはTeoさんのツイートを是非。

なんだろ。こうなってくると「販売は続けるが絶対に新型(EM8)は出さない」みたいな意地を感じなくもありません。まぁ、放置されたり、打ち捨てられるよりはいいか。実はこの年末年始にEM7wをメインで扱っていて思うところがあったのですが、タイミングいいような悪いような話です。

あと、有線版も、公式に陳列されている写真はEM7wがベースになった造り(ロゴ印刷が操作球の上にある)なのですが、実際に販売されているのは昔ながらのロゴレリーフが下にあるやつのままっぽいんですよね。こっちも同時に刷新されるのかな。ってか、それって大丈夫なの? Kensington。

有線版も新型(勢い余って新型っつっちゃったけど誤解を招くといけないので修正)マイナーチェンジ版が出回り始めたようです。報告はKazushi Motomuraさんのツイートから。Teoさんから教えて頂きました。感謝!

皆さん長く愛用されていて素敵ですねぇ本当に。近年は数シーズンごとに刷新する共演者のことを表す言葉みたいになってますけど、トラックボール界には今でも昔ながらの相棒が息づいています。

ちなみにEM7有線版公式の製品写真は、1年前、ちょうどこのサイト作り始めたときにはもう新型に切り替わってたと思うんです。当時「ああ、いつの間にかロゴレリーフなくなってたのか」と思った記憶が……。1年経ってようやく出回り始めたのは、コロナ禍下での混乱が影響してるんでしょうか、それとも、良くも悪くもマイペースなKensington時間での話なんでしょうか。

EM7に限りませんが、ExpertMouseシリーズ最大の特徴である、大玉操作球を利用した精細なポインタ制御能力は発売から16年を経た今も健在です。センサー感度の高精細化著しいマウスと比較してトラックボール界のセンサー感度はだいぶ緩く、EM7も500dpiらしい(未確認。正確かわかりません)のですが、物理的に動かせる範囲がある程度限定されているマウスと違い、トラックボールの場合は操作球が回転する限り延々と軌道を読み取ることができます。そもそもトラックボールとマウスでは「1インチ移動させる間に」というセンサーの測定基準を満たすための労力がだいぶ違いますので、解像度もあくまで目安であって単純比較はできません。操作球が大きくなればなっただけ、その傾向は強まると思います。

EM7 背面

EM7背面。歴代機を思うとつんつるてんで、Kensingtonロック穴すらありません。

TurboMouseはベアリングとともに去りぬ

その昔は、AppleⅡ、Macintosh版の「TurboMouse」と、PC/AT互換機版、DOS/V版「ExpertMouse」。この2種で長らく併売されていましたが(名前と接続方式が違うだけで中身は一緒)2000年前後に周辺機器バス規格としてUSBが普及したことで接続方式も統廃合され、このEM7から名称もExpertMouse一本となりました。日本のトラックボール愛好家界隈での俗称はEM。末尾に世代を付けて「EM5」のような形で表記されます。私もその慣例に倣ってEMxと表記しています。

TurboMouse(ExpertMouse)は80年代半ばの登場初期から6代目までおよそ15年の間、操作球をベアリングローラーで支持していました(トラッキングは初期はロータリーエンコーダーでしたが途中でベアリングの回転を光学式で読み取る方式になります)このベアリング支持機構がとても具合が良く、熱烈な愛好家を沢山生みました。

ベアリング支持機構の何が良かったのか。ベアリングは真球度の高い鉄球で構成された工業用部品で、回転部品の軸受などに使われます。EMシリーズのステンレスベアリングローラー支持機構は、なんと表現したらいいでしょうね……操作球が浮いているような感覚がありました。そして、少し触れると初動の抵抗少なく操作球が転がり始めます。ころがる。操作球も転がりますし、操作球を支持しているベアリングローラーを構成している鉄球群も転がります。ゴロゴロゴロ……。この感触がなんともいえず心地よいのです。

現在主流の「操作球を支持球で保持する」構造には、操作球を「転がしている」感覚はありません。それよりは「滑らせている」と表現するのが正しいと思います。だからこそ潤滑剤が話題になったりするわけですが、その感触自体は悪くありません。癖がないのでこちらの方がシンプルでスマートだとすら思います。

しかし人間ってのは不思議なもので、恐らくは強度的にも精度的にも支持球型のほうが優れているにも関わらず、ベアリングローラー式独特の感触が忘れられない人が居る。特にその、意識が飛んでしまって何するとはなくモニタをただ眺めている瞬間、誰にでもあるんじゃないかと思いますが、そのモニタ上に浮かんだポインタを手元のベアリングローラー式トラックボールで手遊び的に転がしているときのイッてしまっている感は、支持球型トラックボールでは味わえません。ちょっとしたトリップ体験です。いや、本当に。

その、ある種のトリップ性能が問題視されたということにしておきます。現在、ベアリング支持機構を採用したトラックボールは、無くはありませんが買おうと思うとだいぶ苦労しますし、今になって中毒患者を生んでも寝覚めが悪いので、当サイトでも取り上げていません。復活の可能性があるとすれば、ここのところ野心的なエレコムが唯一手を付けていないフィンガー制御左右対称型の操作球支持機構にベアリングを採用した薬中仕様の新型を開発投下、ぐらいのもんだと思います。ないと思いますけどね。ま、ちょっとは期待しておけ。

EM7 支持球とセンサー部

EM7無線型、操作球を取り外したところ。ベアリングではなく人工ルビーの支持球3点で操作球を支えます。支持球周りの処理は最近の機種に比べるとだいぶ荒削りな印象。

長く使ったEM7はこのプラスネジが錆びたりしますので要注意。まぁ、錆びたところで使用するのに問題はありませんけどね。撮影前、スクロールリングの掃除に往生しました。

不満はあるが最高峰

ベアリングを捨てて人工ルビー支持機構へと転身したEM。その先鋒として登場したのがEM7でした。「先鋒」というのはあくまで私のイメージで、その後に次鋒やら大将が控えているものと信じて疑わなかったのですが、まさかその後、EM7が20年近くモデルチェンジされないとは夢にも思いませんでした。確かに、EM6での試行錯誤を経てある程度落ち着いた状態でリリースされた製品だとは思いますが。

なにが言いたいのかというと、EM7は決して完全無欠のトラックボールではなく、過渡期の最後期に「次世代型EM、一応の完成形」として誕生し、そのまま売られ続けている不思議なトラックボールだ、ということです。気がつけば、シリーズ登場初期〜EM6発売までにかかった時間と、EM7が現役で販売されている時間がほとんど同じになるぐらいの長期に渡り、マイナーチェンジも挟みながら現役を続け、最初期型からするとだいぶ細かい粗が消されてはいますが、そもそもがまだ光学式エンコーダの小型化や設置方法などの技術が確立されていない時代の設計でしょうから、今の技術があればもっと薄くも出来るはずですし、スクロールリングももっと具合の良いものが作れるはずです。なぜ未だに更新されないままなのか。

こんなふうに書いてしまうと「時代遅れで最早使い物にならない」と捉えられてしまいそうですが、決してそんなことはなく、現時点でも最高峰のフィンガー型トラックボールだと思います。フィンガー型を使ってみようと思った場合の選択肢は、よほどの物好きでない限りはEM7かSBT(SlimBlade Trackball)のどちらかになります。SBTのほうが発売も新しいですし垢抜けて見えますのでSBTを選ばれる方も多いと思うのですが、2台持ちしているとなんだかんだでEM7に戻っている、なんて経験された方も多いのではないかと思います。私もそのクチです。

EM7 横から撮影

左からEM7、SBT、EM7w、写真

EM7とSBT 比較

slimbladetrackballのページで、両者の簡単な比較を行っています。正直甲乙つけがたい両者ですので、比較しても結論は出ない感じではありますが、参考にどうぞ。悩んでいる方は余計悩むことになるかも知れませんが、悪しからずご了承下さい。

ExpertMouse7 無線型

EM7無線型 裏面
EM7無線型 裏面 電池BOX開
EM7無線型 裏面 レシーバ収納部

2016年に発売された無線型EM7です。有線型も別機種扱いで併売中。私は現在こちらを利用しています。無線方式は2.4GHz独自無線(レシーバ型)とBluetooth4.0LEの2種類が採用されています。私はBluetoothで利用しています。上でも少し触れましたが、以前にも無線版EM7は存在していて、国内版は出なかったと思いますが、米本国には3.0以前のBluetoothを積んだ版もあったような、なかったような……。なんか電池が単2だとか聞いて驚愕した記憶があるような、ないような……。とにかく、無線版もこれが初めてのものではなく前にもあったのは間違いないと思います。有線版はずっと販売されつつ、無線版はその時々でちょいちょいマイナーチェンジしながら販売されていると。やっぱ不思議な扱い方をされている製品だと思います。

最近スマホが外部入力機器をサポートし始めたのもあり、好奇心から繋いでみましたが普通に繋がりました。EM7でスマホを動かすと、なんでしょうね「遠くに来たな……」という変な感慨が。

Bluetoothの無線感度は良好で特に問題が発生したことはありません。独自無線は使ったことがないのですがBluetoothで問題なくつながるので大差はないでしょう。ただ、2.4GHz帯は昨今、混雑が激しいですから、自室の無線環境によっては接続が安定しない状況も発生しやすくなっているんじゃないかとは思います。

私はメインPCのBluetoothに入力機器3種と小型のスピーカをぶら下げていますが、極稀に接続がおかしくなるとスピーカから音が出なくなるので、図らずも接続状況の可視化(可聴化?)が、ある程度実現しています。

その上での実感としては、この程度ぶら下げたぐらいでは問題はないです。入力機器を5つも6つもぶら下げるとまた話は違ってくる気もしますが、それも、単純に混線しているのか、あるいは無線としては問題なくつながっているけど、OSやドライバが処理しきれずに挙動不審になっているのか、そのへんを細かく検証したことはありませんからねぇ。だいたいはPCをずっと立ち上げっぱなしで一時的な不具合が発生しているとかその手の話で、再起動すれば落ち着く程度ですし、ひとつのPCに2台まではわかるとして、それ以上繋いで「同時に動かす」なんて普通は無理な話でしょうから、現実的には最近の製品であれば、初期不良を引かない限りは規格上問題ない製品になっていると思います。これはEM7に限った話ではありません。

私は普段、PC本体のネット接続には5GHz帯を使うようにして、周辺機器は2.4GHz帯でぶら下げる形にしています。これで問題が出たことはないですが、特にコロナ禍以後は、自室以外でも無線機器利用数が増えたのでしょう。2.4GHz帯は速度も怪しくなっているので、最近5GHz帯を広げるべく中継器を導入しました。

なんでこんなこと言うかって、無線が繋がらなかったり、接続が安定しなかったりで、製品まで一緒くたにして糞味噌に言われてるケースが結構あるんだもの。恐らくそれ、十中八九、あなたの環境の問題だと思うんだけど。理不尽な難癖をぶつけられてる製品たちを見てると本当に気の毒です。ほんでまたそういう短絡者に限って文句言うためのフットワークは軽いんだ、これが。

ExpertMouse7 私の扱い方

  • EM7無線型 手を載せたところ
  • EM7無線型 指先での操作球制御
  • EM7無線型 薬指でスクロールリングを扱うところ
  • EM7無線型 人差し指でスクロールリングを扱うところ

手前にリストレストを置いて扱っています。手指の形はDEFT PROを扱う場合と一緒です。製品に付属の純正リストレストは、さすが純正だけあって感覚は良いのですが、細々と融通が効かないのでほぼ使ったことありません。EM7やSBTなどの大玉型は写真のように手袋をした状態でも扱えますので、寒い冬にはこの状態です。と言っても指抜き型のニットの手袋ですので指先は露出しています。慣れてしまえば裸手で扱っているのと遜色なく扱えますので、冷え性の方は試してみて下さい。私は冷え症ではないのですが部屋に暖房器具がなく厚着で過ごしているのでこうなっています。ただこのスタイルの場合、トラッキング操作は問題ないのですが、キーボード操作を手袋が邪魔するので、一本指タイピングを併用のこと。

完全な手袋でも扱えますが、やっぱりちょっと操作が難しくなります。

ExpertMouse7 まとめ

ポインタ制御の完成度は安定して高いのですが、本体の傾斜がきつめでリストレストが必要になる場合が多いことと、スクロールリングの出来がイマイチという2点が、EM7の欠点としてよく挙げられます。スクロールリングは近年のモデルでは改修されたのか、初期モデルのようなひっかかる感じはなくなっていますが、そもそもの設計があまり適切でないのか、建付けが緩く掃除もしづらい。後発のOrbitScrollringのリングなんかはとても良く出来ているのですが、まぁそれもこれもEM7で得られた反応から改良されたものなのでしょう。

さんざん遠近で言われていることですが、付属のリストレストはあったほうが断然扱いやすいものの、リストレストまで含めるとさすがに巨大になるので、省スペースというトラックボールの利点が怪しくなります。そこで最初は適当にタオルなどをを丸めてリストレスト代わりに使うことをおすすめします。もちろん付属のリストレストをそのまま利用してもいいのですが、まったく調整が効かない&一度設置すると分離が面倒なので、リストレストは別に準備した方が色々融通が利きます。

最近は、なんとなくEM8が出ないかなぁと夢想することもありますが、多少の好みの差は誰にだってあります。ましてトラックボールはその傾向が強い、自分の感覚に触れてくる入力機器です。感覚的に好き嫌いで切って捨てられることがほとんどの世界で、長いこと定番として売られ続けているEM7。業界の顔としての役割こそ親指型に取って代わられた感がありますが、相性が合えばこれほど頼りになるトラックボールは他にないと断言できますし、私にとっては常に最高峰に君臨しているキングオブトラックボールです。

統治してないだけでね。

Expert Mouse Wireless Trackball

Expert Mouse Wired Trackball

【55㎜】トラックボール用交換球

ぺリックス PERIPRO-304 赤
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現行機種で55㎜操作球を採用しているのはKensingtonのEM7とSBTの2機種ですが、この2機種の操作球は載せてあるだけで固定されていないので、うっかり本体を持ち上げた際に操作球を落っことしてしまう、なんてことが結構あります。破損でもしようものなら泣くに泣けませんが、そういう時にはこの交換用操作球をどうぞ。色味も独特の赤なので気分転換用としても行けます。

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