Orbit Wireless Mobile Trackball
- KT-2352
- 32㎜
- 2(3)
- 2.4GHz独自無線
- 単3電池×2
- 5年
いつの時代もマイペースなKensingtonさんのモバイル型Orbit。フィンガー型としては小型の32㎜操作球を搭載し、名前の通りモバイル向けに可搬性を考慮した(注:メーカー比)トラックボールです。
スクロールは操作球周辺にスクロールリング風に置かれたタッチ式センサーで実現。2.4GHz帯の独自無線を採用し小型レシーバをUSB接続。物理ボタン2+同時押し1の3ボタン式、左右対称型でフィンガー操作というKensington節は健在です。
初見の印象
2020年現在、モバイル型のトラックボールも複数機種が存在していますが、長い間このOrbit Mobileが一人で市場を守っていた……というよりは誰も後に続かなかったと言ったほうが正しいかな。モバイル型ではなくハンディ型なら昔からあったんですが、とにかく孤高の存在だったOrbit Mobile先輩は、アメリカンスケールな印象の強いKensington製ですからその御多分に漏れず。正直、モバイルという単語は日本とあちらでは概念が違って、あちらさんではピックアップトラックで運べりゃ全部モバイル扱いでいいんでしょう。
モバイル用途って、私はあまり欲しいと思ったことないのですが、大は小を兼ねるが国是みたいなとこのメーカーが出してくるぐらいですから、より小型な、ウェアラブルとかポケッタブルとかのイメージでモバイルを捉えている日本人的には、結構な需要があるのかも知れませんね。
Orbitファミリーの最新型※でもあるOrbitMobile先輩を自宅にお迎えした第一印象は「デカっ」でした。先輩、デカすぎますって。おかしいな量販店のトラックボール特設コーナーで見た時はもっと控えめで奥ゆかしい感じだったのに……モバイル用……??
どれぐらいデカいかと言うとですね、比較写真載せておきますが、小型のマウスよりは余裕で大きいです。モバトラ界の後輩にあたるbitraと比較しても貫禄ありますねぇさすが先輩。いや、まぁ、トラックボールってのは多少は大柄に生まれつくもんですけど。
接続方式と電源
接続は2.4GHz独自無線方式。レシーバは電池室内に収納可能です。電源は単3電池×2と。先輩、どこから見ても左右対象で頑張ってきましたが電源スイッチの位置だけは左右対象になりませんでしたね。惜しい。いや別にいいんですけど。
操球感覚
モバイルという単語から想像するイメージのギャップに軽く肝を抜かれましたが、気を取り直して、実際に使ってみてどうかというと、そこはさすが老舗の若旦那。普通に使えます。完全に握り込むには少し大きく、かと言って小さくもないという絶妙なサイズ。
私、どこのページでも「普通に使える」って言ってる気がしますが「買ってきて、期待と不安に胸踊らせながら開封して、PCに繋いで、普通に使えない」のが割と当たり前だった時代に多感な青年期を送ったので、単純につなげばそれでポインタは正常に動いてくれて、スクロール又はそれに類する機能が正常に動いてくれればもう「普通に使える」で八割方満足なんですね。実際使えるし。そりゃ贅沢言えばキリはないけど、現行品はもうどれ買っても八割の完成度はあって、残り二割の話を無理やり膨らませてるだけの話です。はい。
操作球が32㎜と小さいので、若干操作に忙しなさがつきまとうものの、弾く操作と指先で転がす操作を組み合わせることで、見た目から想像する以上に自由な制御が可能です。センサー解像度の変更機能はありませんので、代替機能的にポインタの速度をKensingtonWorksで調節することになります。そこそこ設定項目ありますが、ポインタの高速化に関してはあくまで高速化させるだけで高感度化ではないと思います。
ボタンとスクロール
次にボタンですが、数こそ2と少ないものの、垂直気味の左右クリックボタンは押すのではなく、左右から握る/掴む感覚で、ちょっとTurboMouse4の頃を思い出します。この手のボタンは古株の機種以外では最近は滅多に見なくなりましたが、やっぱり良いんですよ。特に薬指や小指は握る方向へ(親指とくっつけるような方向へ)動かすほうが力が自然に入ります。旧来のマウスの持ち方で、上から下へクリックする方向へ薬指小指を活用するには若干の慣れが必要で、人によっては薬指と小指がセットで動いてしまう場合もあると思いますが、握る方向であれば誰でも自然に、薬指も小指も別々に扱えると思います。ラケット握ったりするのと同じ動きですからね。これでもうちょい、ボタンが天面まで出てきていれば「押す」制御も可能だったんですが。
タッチセンサーでのスクロール機能は、ええ。だいたいの人が見て想像した通りだと思います。物理的なホイールやリング式と比較するとどうしてもあと一歩感が。自分の体調次第で指先が湿ってたりすると思ったとおりに動いてくれないこともあります。生体反応式インターフェイスと思えば未来の香りはしますが、実態は昔のラップトップについてたタッチパッドの隅っこに指を添わせてイマイチ反応がアレなスクロールを動かしている感じに近いかな。
ただ、このタッチセンサーとの相性は本当に人それぞれのようで、私のような脂性は恐らくあまり相性がよくありませんが、問題なく制御可能な人もいらっしゃることでしょう。実に羨ましい。まぁもうそういう身体に生まれてしまったことを呪っても仕方ないので諦めますけども。
タッチセンサーの精度の問題を除けば、操作感覚はSlimBlade Trackballの捻りスクロールに似ています。あちらは操作球の横回転を読み取ってのスクロール、こちらはタッチセンサーという違い。普通のスクロール操作に支障はありません。長大なページを一気にスクロールさせるような動作は決して得意ではありませんが、そこはそれ、トラックボールですからね。スクロールモードに変更して一気にスクロールさせたり、スクロールバーを掴んで引きずり下ろしたりと色々やり方はあります。
このタッチセンサーは操作球周りをぐるっと360°カバーしているわけではなく(●)←こんな感じになっています。こう書くとまるでやきうのお兄ちゃん公認トラックボールみたいですがさておき、12時部と6時部はセンサーが途切れています。スクロールが効く方向も左右対称の完全シンメトリ構造になっており、1時〜5時までを指でなぞった時と、11時〜7時までを指でなぞった時、どちらも同じ方向へスクロールします。
初期設定では手前に引く方向でなぞると画面を下方向へスクロールさせますから、例えば人差し指と中指で操作球を挟むようにしながら両方の指先をタッチセンサーの奥側、1時と11時へ置き、中指を手前へ引いてスクロール。5時へ到達したら今度は人差し指を11時からスタートして7時まで引いてスクロール、と2段構えのスクロール操作を行うことで、2倍の距離をスクロールさせることが可能です。うーんこの役に立ちそうでまったく使えなさそうな解説はどうだ。どうせなら左右のスクロール帯で別々の設定が適用できたらいいのにね。右側は上下スクロールで左側は左右スクロールとかさ。KensingtonWorksではスクロールの方向を正転逆転させる設定はありますが、左右別々の設定はないのよ。残念。
レビューまとめ
モバイルという言葉の概念から謎かけでこちらを揺さぶってくるような革命的トラックボール、Orbit Wireless Mobile。戯れはさておき、日本人が想像するモバイルという言葉のイメージからするとだいぶ大きいですが、左右対称形で右でも左でも使えるとなれば、よくここまで小型化したなと言えると思いますし、ある程度の大きさがあるおかけで、モバイル用途に特化させずメインで据えて使うことも充分可能です。持ち運んでよし。メインでもよし。サブでもよし。そう考えると実に守備範囲の広いトラックボールで、タッチセンサーの癖を乗り越えて、愛用している方も居られることでしょう。
私が実際弄ってみた限り、タッチセンサーは上手に使いこなせませんでしたが、ポインタ制御に関しては32㎜操作球でもほとんど問題を感じませんでした。使いこなしの最大の障壁はやはりタッチセンサースクロールだと思いますが、なんでしょうね、センサーが合わないので2軍落ちを通達、という感じではなく、手元に置いておきたくなる不思議な魅力があるトラックボールです。野球でいうとこのユーティリティプレイヤーっぽいとでも言いますかね。仮にこれ、Bluetooth版が出たとするじゃないですか。そしたら私、買います。個人的にはタッチセンサーよりもレシーバ式無線のほうがネックに感じているというね。
米本国では「Works with Chromebook」認定されたようで、ChromeOSでも問題なく動くと。あちらさんの教育市場はChromebookが強いと聞いたことありますし、早いうちからトラックボールに触れる機会を確保するってのはとても大事だと思いますから、先輩、トラックボール普及活動の先兵として結構な大役を仰せつかっている感じですね。頑張って欲しいです。
OrbitMobile先輩、露払いと太刀持ちにワイヤレスモバイルトラックボール界の後輩bitraを従えて。