MX ERGO

Logicool(Logitech)
MX ERGO 真上から
型番
MXTB1s
操作球径
34㎜
ボタン数
8
接続方式
2.4GHz独自無線(Unifying)
Bluetooth LE
給電方式
内蔵充電式バッテリ(USB充電)
読取精度(dpi)
512〜2,048(初期値380)
保証期間
2年1年

Logicool社製品群の中でも旗艦級モデルに付与される称号「MX」を冠した親指型トラックボール、MX ERGO。この世に存在する親指型トラックボールすべての旗艦モデルと呼んでも差し支えないでしょう。

さすが現在はトラックボールの代名詞となった親指型の旗艦モデルだけあって、発売当時から遠近でレビューされています。真っ当なレビューは他に山程あると思うので真面目に検討したい方はそちらをどうぞ。私の場合はそもそもが親指型はあまり得意でない人間で、そういう人間の視点です。前提条件として以下のことをご了承の上読み進めて頂けると幸いです。

  1. 書いている人間は親指型があまり得意ではない、フィンガー派の人間です
  2. 書いている人間は乾電池派です
  3. 書いている人間は無線派のBluetooth好きです
  4. 書いている人間はPCゲームはほとんど遊びません
  5. 書いている人間のメインPCはMacです(Windowsでも使いますけども)

初見の印象

MX ERGO

長く親指型を手掛けてきたLogicoolがそのノウハウに加えて、近年マウスで流行している垂直型、親指側を持ち上げる負荷軽減構造として、従来の角度ともうひとつ20°の斜めに傾けた状態で設置可能な仕掛けを盛り込み、旗艦モデルのトラックボールとして世に送り出した、その名も「MX ERGO」と来たもんだ。エルゴノミクスって大量絶滅前に流行ってたんだよなぁと思うと一抹の不安も過りますが、レシーバ型独自無線とBluetoothの両対応に内蔵充電式バッテリ駆動と、同社製マウスの旗艦モデルと同等の仕様を備えています。軍艦色のボディが文字通りフラッグシップを思わせる佇まい。

外装

MX ERGO

掌が触れる表面部分にはラバー塗装っぽい処理が施されており、見た目も感触も大変良好ですが、この手の処理の宿命と申しましょうか、ユーザーが長期間使い込むことで剥げてしまいます。それはモノによっては「おお〜使い込んでるね〜カッチョイイね〜」となることもままあるのですが、MX ERGOの場合、全面ラバー塗装ならまだ良かったんでしょうけど、ボタン部なんかは恐らくプラ素材そのまま。なので、剥げてしまう部分とそうでない部分とがまだらになってしまって、ちょっとみすぼらしさの方が先に立つ気はします。

これに限らず昔のT-BB18やCT-100の頃も、塗装が剥げるだけならまだしも、ラバー処理が劣化するとどうにもこうにも、加水分解でベタベタのボロボロになった日にゃ目も当てられません。Logiさん昔からなんかひと細工しないと気が済まないのか、しかも厄介なことに高級機ほどこの手の処理が施されるので、少なくともスナック感覚では購入しないであろう高級機が数年で修理交換や廃棄の憂き目に。そんなことしなくても十分高性能な入力機器作ってるんだから要らんことしなくていいのに。そういうのが一切ないマーブルさんなんかはスイッチやセンサーさえ壊れなけりゃ20年越えても現役よ?

それともあれかな、スイスは高地で乾燥してるから加水分解を知らないとか。

まぁ、トラックボールの場合は長期使用時の外装劣化をカッチョイイ悪いで言及するまで使い込んだのであれば、それはもう十二分に堪能したと考えていいと思いますけども。ほとんどの場合、そこまで長く付き合う前に投げ出されてしまうでしょうから。

角度調節ヒンジ

MX ERGO

MX ERGOの特徴として最も目立つのが、この角度調節機能だと思います。本体内に組み込まれた強力な磁石で底面の金属製プレートを固定することで、旧来のM570的な角度と、そこから20°傾けた状態の2種類、どちらか好きな方で設置することが可能になっています。なかなかしっかり固定されるので、意識して倒そうとしない限りちゃんと20°の傾きを保った状態で問題なく扱えますし、元に戻そうと思っても簡単に戻せます。

ただ、ヘビーユーザーが持ち歩いたりする状況下では固定が甘くて問題あったりするそうですが、自宅に据え付けて扱う限りは問題ないと思います。持ち歩くには結構重いですしねこの機種。他機種では替えが効かないトラックボールであることもわかりますが。

これギミックそのものが面白くて、買った当初は意味もなくカタカタとシーソーみたいにして遊んだりしました。大人げないことこの上ありませんがともかく、私は操作時は20°傾けた状態で弄っています。というか、MX ERGOを0°で使ってる人って居るんですかね。

  • DEFT PRO左側面ボタン群写真 番号付
  • DEFT PRO左側面ボタン群写真

接続方式とバッテリー

MX ERGO

接続方式は2.4GHz独自無線とBluetoothの2系統。電源は内蔵充電式バッテリー型となっています。接続方式はともかく、内蔵充電式バッテリーを搭載したトラックボールは珍しいです。ざっと思い返してみましたが……あれ。ちょっと思い当たらないな。ひょっとしてMX ERGOがトラックボール界初?(ちがいました)

Unifying

ユニファイングドングル

独自無線はLogicool社の社内製品規格とでも言いますかね。Unifying(ユニファイング)という名前で一応統一された規格となっており、ひとつのレシーバに最大6台まで対応機器をぶら下げることが可能になっています。一般向けのPCがラップトップ型になってからこっち、USB端子もそんなに沢山は搭載されていませんので、例えばマウス用に1つ、ゲームパッドで1つ……みたいなつなぎ方を始めると端子がすぐ足りなくなりますが、Unifying対応機器ならレシーバ1つで沢山繋げるのでUSB端子を浪費せずに済みますよと。

おかげで、通常、独自無線接続方式の入力機器はレシーバを紛失すると製品そのものがアウトになってしまいますが、LogiのUnifying対応製品ならレシーバだけ購入して復活させることが可能です。

結構長いこと運用されている規格なので安定性もさることながら、ソフトウェア的な拡張機能の利便性や省電力に関しても定評があります。同規格対応のM570なんか、単3乾電池1本で半年〜1年ぐらい平気で持ちますからね。

ただ、困ったことにMX ERGOは、このUnifyingレシーバを本体に収納出来ないんです。上記したように紛失しても新しくレシーバだけ購入が可能とはいえ、この御時世にそりゃねぇよと驚くばかり。こんなん、Unifying使わない俺は絶対なくす自信があるわ。ホントこの仕様だけは理解に苦しむ。

Bluetooth

Bluetooth接続は省電力に振ったlow energyを採用。私はBluetoothで接続しています。まだソフトウェア的な拡張機能を試していないのでその辺がどうなるかはわかりませんが、普通に利用する分にはまったく問題ありません。


内蔵充電式バッテリー

MX ERGO内蔵充電式バッテリー

私は乾電池派ですので(eneloopもアリ)内蔵充電式バッテリーが採用されていることに関してはハッキリと「気に入らない」んですけど、内蔵充電式の方が便利な点もあるにはあるでしょうから……とにかく見ていきましょう。

この内蔵充電式バッテリーは、満充電で公称4ヶ月持つそうです。また、うっかり充電が切れても1分充電すれば1日使えるそうなので、とりあえずケーブルを繋いで充電しながら使うことで急場をしのいで、あとは放置しておけば満充電完了。そしたらケーブルを外してOKと。同社製品には内蔵充電式バッテリー型のマウスも結構古くからありますから、この形の運用に慣れているユーザーも結構居るのでしょうね。便利なんだか煩わしいんだかわからなくなりますが。

充電用の端子はMicroUSBで、製品に充電用のケーブルも付属していますが、このケーブルをPCと繋いでの有線接続には対応していません。あくまで充電用です。なんだかなぁ。どうせなら有線接続も可にしときゃ良かったろうに。あたしゃ無線派ですけど、有線派が有線接続を求める理由、例えば遅延を避けたいとか、電源管理が面倒だとか、それは理屈としてよく理解できますからね。まぁ電源内蔵してる時点で無理か。

内蔵バッテリーの分別廃棄時用に、本体の分解手順も公開されています。トルクスドライバが必要なので誰でも簡単手軽とは行きませんが……古いMacintoshの時代にトルクスドライバ知った時は特殊工具扱いの変態ビスでしたが、今時分はトルクスも珍しい工具じゃないか。うそーん。そら90年代からすりゃメジャーになったけどトルクス揃えてる家なんてまだまだ少ないだろうよ。Vesselのファミドラ8に装備されない限り日本国内でメジャーになったとは言えないと思いますが、どうやって廃棄させるつもりなんだ。なに? トラックボールがあるような家庭は普通じゃないからトルクスぐらい置いてあるだろって?

……とにかく、ユーザー側での廃棄手段も準備した結果(今時分は法令とかでそうしないといけないとかの縛りがあるのかも知れませんね。あるいは環境配慮型のステキ企業アピールとか。IT系そういうの好きやからなぁ)分解は一部特殊工具さえ準備出来れば簡単です。ということは、多少知識がある人なら同じ型の充電池を入手交換することで使い続けることも可能でしょう。

なんでしょうね。栄えある「親指型全体のフラッグシップ」機なのに、接続方式とバッテリー周りに関しては不満が多いです。無線接続そのものの品質はまったく問題ありませんが、そんなの当たり前っちゃ当たり前のことですからね。

軽く開腹

MX ERGO

うちのMX ERGO、一見元気ですが内蔵電池の具合も気になりますし、久々引っ張り出して清掃がてら分解廃棄の予行演習してみました。仮にぶっ壊れたところで廃棄はしないでしょうけど、内蔵電池がヘタったらそれだけ廃棄することはあると思うので。

上でも少し触れましたが内蔵バッテリの廃棄用に分解手順は公開されており、また実際、簡単に分解可能な作りになっています。底面の金属プレートを外し、トルクス(T6)で見えているビスを6本外せば、あとは爪で固定されているようなこともなくパカっと開きます。この辺、競合他社とは一味も二味も違って、一応はリサイクルとかサスティナブルとかお題目を唱えるだけでなく実践し始めている様子が窺えます。この先も続くといいね。

内蔵バッテリを取り外すだけならトルクス(T6)一本で作業はおしまい。基盤を外したりする場合は開腹するだけならトルクス(T6)のみで行けますが、バッテリを廃棄する場合はプラスドライバ(0番)もあった方が作業が楽だと思います。いずれにせよ割と一般的な工具で分解可能ですが、トルクスを一般工具に含めて良いのかどうかは評価が別れるでしょう。

ステータスランプ等に繋がっているリボンケーブルはコネクタじゃなくて、なんつうのかな、くさびみたいにプラ部品で端子を挟み込むような構造になっており、拍子抜けするほど簡単に脱着が可能でした。確かに廃棄はしやすそうだけど……そんなに捨てて欲しいのかい? やなこった。

MX ERGO 左右ボタンスイッチ
MX ERGO内蔵充電式バッテリー
MX ERGO内蔵充電式バッテリが載るトレイ

一方で内蔵バッテリー接続端子はさすがに普通のコネクタ。そらそうよね、ここはしっかりしとかないと怖い。バッテリ小さいですねぇ。リチウムポリマーだそうです。破裏拳……。それ以上言うなって顔されてますね? 了解! バッテリはトレイ状のプラ部品に載せられていて、両面テープで固定されているようです。このトレイ部品はネジ止めで簡単に外せるので、バッテリ廃棄時にはトレイ単品にしてから引っ剥がす感じでしょうか。

操球感覚

MX ERGO

親指型の標準34㎜操作球(灰メタリック)を搭載したMX ERGO。読取り解像度は512〜2048dpi間の可変式。

でその可変式解像度の通常操作時の塩梅ですが、いや〜さすがLogiさんと言うべきかMXと言うべきか。上手いこと調整されてるんでしょうねぇ。とても具合いいです。私は親指操作は苦手なのですが、MX ERGOの感覚なら結構普通に動かせます。他の親指型だとテキストの範囲選択を若干プルプルしながらクリックドラッグ……あー1文字分外れた、みたいなことが結構あります。MX ERGOも使い始めはその調子でしたが、このページを軽く弄っているうちに馴染んで来ましたよ。

一応このサイトには、各機種個別のページはその機種で作るという自分の中での取り決めがあり、親指型の機種ページを作り込む際は若干操作に手間取ってキーっとなることもあるのですが、MX ERGOはあまり原始還りしなくて済みます。親指型も現行品はだいたい弄って来ましたけど、うーん。操作感覚の具合良さはMX ERGOが一番ですね。仮に他の型のトラックボールを知らず、最初に手にしたのがMX ERGOだったら、普通に親指派になっていただろうなあと思う程度にはいい感じです。

いいんだよ。最初に買ったゲーム機はSG-1000Ⅱなんだからさ。俺はそういう星回りに生まれたんだよ。

それから、とにかく精細に動かしたい! という時用に、一時的に解像度を落とす機能も搭載されています。操作球近くにあるボタンを1回押せば白色LEDのステータスランプが点灯して精細機能有効、もう1回押せば解除されて通常に戻ります。

コツと言ってしまっていいのかわかりませんが、操作球を回転させながら(親指を操作球から離すこと無く)ポインタを任意の場所に誘導するのではなく、操作球を弾いてポインタを飛ばすイメージで扱う方が、ポインタ制御は上手いこと行く気がします。直線的にポインタを制御している感じですね。これはMX ERGOに限らず親指型全体がそんな傾向ですけど、MX ERGOは特に、弱めに弾いた時と、強めに弾いた時、それぞれでポインタの止まる感覚が適切というか、私には丁度いいというか。

一方で情報漁っていると、私がコツっぽいなと思った操作方法とは真逆の「操作球から親指を離さずに扱うほうが良い」という話もありました。私は親指操作は不得手だと自覚していますから、そちらの方が正しいかも知れません。次に親指型を触るときは操作球から親指を離さない操作方法を意識して試してみようと思います。究極には人それぞれなのかも知れませんが、道がいくつか存在することをテキスト化しておくのも無駄ではないでしょう。多分。

ボタンとスクロールホイール

MX ERGO

メインの左右ボタンは別パーツ化された部品構成です。さすが高級機。高耐久スイッチも採用されているそうで、押し心地も良好です。特筆すべき点はありませんが、欠点も見当たりません。あとはその、同社製品でよく言われる耐久性がどうか、でしょうか。これは長期利用しないとわからないので現時点では評価保留ですが、発売から3年弱、稀にチャタったという報告を目にするものの、M570のチャタリング報告頻度からすると少ないと思います。普及台数の違いは考慮してませんが、そもそもMX ERGOを購入するユーザーなんて大なり小なりヘビー寄りのユーザーでしょうし、そういう選りすぐりの人たちが使用しているであろう状況下でチャタリング報告をあまり見ないということは、丈夫に作ってあるんだと思います。

開腹してみたところ左右のスイッチは中華製D2FC-F-7N(10M)、1000万回耐久型ですっけねこれ。写真見辛いですが一応拡大表示に対応していますので気になる方はクリックorタップどうぞ。基盤外せばもっと楽に撮影出来るんですが面倒でね。外すのはまだいいけど、戻すのがさ。

特徴的なのが、プレシジョンスクロールホイールなる名前のついたホイール。このホイール回した感触が軽くてとてもいいのですが、画面上のスクロール感覚も実に軽快。見たところ光学式のようですね。

プレシジョンホイール部品

カリカリの感触は軽めで、速めに回すと「ジャッ、ジャッ」というラチェットっぽい感触が返ってくる、ファストスクロール機能が付いていた頃のホイールっぽいですね。私が持っていたLogi製マウスだとM555bとかあのころの感覚を思い出しましたが、実際もっと上質な感触になっていると思います。フリースピン機能はありませんが、強めに回すと慣性を効かせながら結構な距離をスクロールしてくれます。制御ソフトウェアをインストールしていない状態でも十分な挙動。個人的にはカリカリの感触はハッキリしているほうが好きなのですが、プレシジョンホイールのそれは割と軽めの手応えにも関わらず、実にいいです。バランスがいいんでしょうねきっと。

例えとして正確かはわかりませんが、本物のラチェットレンチを使用する場合、歯数が増えてカリカリの感触が小刻みになっても、決して不快に感じることがないのと似た話なのかなと。こういうアナログ感を疎かにせず、それどころかかなり感触に拘った上でデジタル入力機器に組み込むLogiは凄いなぁと思います。

ホイールクリックとチルトはちょっと硬めかなと思います。私はほとんど使わない機能なので、そもそも注文も無いに等しいのですが、ここいらは本当に人それぞれ好みもそれぞれ、要求レベルもそれぞれですからねぇ。個人的にはフニャフニャしたチルトより硬めの方が暴発の恐れが少ないので好ましく、結論としてホイール周りは文句なしの出来です。

ソフトウェア機能拡張

MX ERGO

私はトラックボールを評価する際、基本的には買ってきて箱から出して繋いだ状態でどの程度使えるか、ハードウェアの出来を基準で考えるようにしてはいますが、そうは言っても高機能モデルをレビューするのにソフトウェア制御能力をまるっきり無視するわけにも行きませんので、まぁボチボチやって行こうと思います。

昔で言えばドライバソフトウェア、今は……何と言えばいいんでしょうね? 実は地味に悩んでたりするのですが、MX ERGOのソフトウェア制御による機能拡張について。Logiのソフトウェアは近年は評判もよく、特に旗艦級の機種には、通常の制御ソフトウェアである「SetPoint」とは別に「Logicool Options」という高機能制御ソフトが準備されています。

複雑高機能化する入力機器をより効果的に活用するため、高機能なソフトウェア制御は必要不可欠だと思いますが、この方面、Logiはいち早く取り組んだので今は他とは比べ物にならず、頭2つぐらい抜けた完成度になりました。他はダメダメなとこが多いですからねぇ。私は守備範囲外なのでまったく知らないのですが、ゲーミングマウスなんかを販売しているメーカーはこの辺どうなんでしょうね。

Logicool Optionsの中でもFlow機能は評判いいです。これは複数OSに跨って操作環境を瞬時に移行出来る上に別OSから別OSへのコピペ等にも対応している機能で。例えば私なんかはmacOSとiOSを併用してまして、この2つのOSは兄弟みたいなもんですからクリップボードの共有機能もありますが、確かに、地味に便利で結構利用してます。Flowは異種OS間も同種OS間も関係なくやり取りできるでしょうし、便利なはずです。

気になる点

MX ERGO

ここまで色々弄ってきて、完成度の高いトラックボールであることに疑いの余地はありませんが、気になる点もあります。上でも少し文句言いましたが、バッテリー周りはちょっと尖りすぎじゃないかなぁ。

まぁ、そもそもが上級者向けの高級機なんだと思えばその辺もわからなくはありませんが、保証期間が2年ってのは、これは頂けません。最近のLogiは保証期間は短縮傾向というかもう完全に短縮してますね。1万円からする高級入力機がですよ。もちろんそれに見合うだけの贅を凝らした作りなのはわかりますが、耐久性に懸念がある部品なども採用されている状態でたった2年しか保証してもらえないのはどうかと思います。なんせ、間違いなく劣化する部品であるところの内蔵充電池を腹に抱えてるんですよ。絶対に劣化しますよ。新品未開封で冷暗所に保管してたって先々の性能は怪しいもんなのに。それだからこそ短縮したと思えなくもありませんが、だったら内蔵充電池の採用なんてやめてまえ。

それからですね、MX ERGOは操作球が取り出しにくいという地味に困る特徴もあります。操作球周りをメンテナンスしようと思うと、底のプレートを取り外し、小さめのメンテナンスホールにペンなどを突っ込んで操作球を取り出して掃除、という流れになりますが、穴が小さい(実測8㎜)ので、小指の先ももちろんのこと、太めのボールペンなんかも入らないんですよね。先々面倒くさいのを繰り返す回数を減らそうと思い、私は入手して少しテストしたのちに、フッ素系潤滑剤を塗ったくってやりました。潤滑性の確保より、ホコリ避けの意味合いが強いです。

  • 外装ラバー処理の耐久性が不安
  • Unifyingレシーバを収納出来ない
  • 付属のケーブルは充電専用で有線接続には非対応
  • 操作球が取り出しにくく、その分メンテナンスが面倒
  • 内蔵充電池の寿命が不安
  • 内蔵充電池の廃棄が面倒

まとめるとこんな感じです。見事に「機種そのものの操作性には影響しない」点ばかりですので、MX ERGOのトラックボールとしての性能を否定するものではありません。むしろ、そっちの出来がいいだけに余計に気になるというか勿体ないというか。自分で書いておいてなんですが、人間贅沢を言う生き物ですからね……。

まとめ

MX ERGO

文句も言いましたけど、総評として「親指型の旗艦」という最初の見立ては間違いではないと思います。操作系はセンサーもホイールも文句なしの出来で、これで駄目なら親指型はどれを弄っても一緒かな。ソフトウェア制御による機能拡張も業界一。当分は同じステージで戦いが起こせるメーカーも現れないでしょう。

いかんせん高額商品なので、初心者がおいそれと手を出すわけには行かないと思います。親指型トラックボールとしての性能には文句ありませんが、無線式のわりに必ずしも取り回しが良いわけではなく、内蔵充電池の寿命も気にかかりますし、保証期間が2年1年しかないのも痛い。それもこれも理解した上で購入できる人なら問題ないのですが、万人向けではなく、親指型をこよなく愛する親指トラックボーラー向け、同じくLogi製で恐らく世界で最も普及しているであろうM570Tとそのフォロワー群からの乗り換え、乗り継ぎ、ステップアップ先と考えるのが一番自然だろうなと思います。

ただ、繰り返しになりますが親指型トラックボールとしての基本性能は本当に文句なしです。M570Tで特に不満を感じていない人が使っても「さすが上位機種」と納得する点は多々あると思います。

恋人には最高だが添い遂げるには不安がある。美人薄命感のある機種という気がします。

MX ERGO 後方から

24年現在世界で最も普及しているであろう34㎜操作球には交換球が存在します。最も代表的な交換球が独ペリックス社の交換球で、カラーバリエーションがあるので着せ替え的にコレクションしている人も結構居られるようです。最盛期はもう少しバリエーションありましたが最近は厳選モードに入った模様で一部消えたりもしていますので、詳細はリンク先でよくご確認の上ご購入下さい。
白眉は後ろから2番目の「マット球」。これだけが艶消し処理が施されたざらざらした球で、当然滑りません。が、滑らないおかげで操作精度が上がります。他の色と違い艶消し球だけは使用感が大幅に変わる、ある種の改造グッズみたいなものです。個人的には大昔のゴム巻きシャフトローラー機のような感覚があって、これはこれで十分使える球だと思います。普段扱っていて「滑りすぎる」と感じる方は試してみるのも一興。一度は販売終了になりましたがユーザーの熱い要望に応えて復活しました。やったね!
一番最後の箱入り娘はエレコム純正の34㎜交換球です。色は赤ですがペリックスの赤とはまた色味が違います。

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