ふえ〜るある〜ばむ〜♪ のフエルアルバムで有名なナカバヤシさん。デジカメ世代にはなんのこっちゃでしょうか。そのナカバヤシさんが展開する情報機器系サプライ製品ブランドDigio2の親指型トラックボール「Q」。最近は増えてきましたが、トラックボール界ではかなり早い段階で静音化に目をつけた製品ではないでしょうか。
小型化、静音スイッチ搭載、3種類の接続方式併売、カラーバリエーションなど、なかなか意欲的な製品群で、それまでPC関連製品では名前を見なかったナカバヤシさんがトラックボールというニッチな市場に参入していたことにも驚きましたが、調べてみるとLOASを吸収したんですね。ロアスか……。正直あまりいい思い出のない名前ですが、Qはとてもいいトラックボールだと思うので昔のことは忘れます。
幸塚名物全周動画でございます。気になる場所など御座いましたら動画を止めて嫌になるまで眺めて下さいませ。この動画で伝わるかどうか判りませんが、Qはあっちこっちちょこまかと微妙に質感違いのプラ部品が使われていて、私が見るだけでも3種ぐらいあり、結構贅沢な造りしてます。
Q親指型 2024年モデル登場
2017年の発売当初は競合機種も多くなかったQ親指型ですがその後様々な機種が登場し現在は百花繚乱と言ったところ。それでも個性的な機種なので存在価値に変わりはありませんでしたが、さすがに発売から7年も経過すると周辺事情が変化を要求してくるとでも言いましょうかね。外装と一部機能を変更した2024年モデルが登場しました。主な変更点は以下です。
- カラーバリエーションに近年流行のくすみカラーでグレージュとブルーが登場。私はグレージュ版を購入しましたが、17年版よりマットな質感になっており、ものっそ良い感じです。
- Bluetoothが3.0から5.1へアップデート
- 公式の機能割当ソフトウェア「Digio2 Mouse Setting」に対応
旧17年モデルにも黒と白はありましたが、恐らく質感は変わっています。他機種を圧倒する静音性はそのまま新24年モデルに受け継がれていますので、旧モデルを買うメリットがあまり見当たらず、特にBluetooth版を検討されている方は余程のことがない限り24年版を購入して良いと思います。有線版を所望される方は旧モデルしか選択肢ありませんけども。
初見の印象
当サイトを作成するにあたり、市販されている中で私的に選択肢から外れていたトラックボールを調べて回った際、興味を持ったのがこの機種でした。20年1月頃のことです。
私は親指型が不得手なので普段はあまり選択肢に登らないのですが(トラックボール好きなので情報は見ます)こちらDigio2Qは、メーカーさんのサイトに掲載されていた写真が、私のマウスの持ち方と同じでした。
「掌全体を乗せるのではなく、掌の付け根は机上に固定して、入力機器本体は指の付け根辺りでホールドする」感じなのですが、恐らく世間的には少数派の持ち方で、多数派は掌全体を入力機器に乗せ、大きな動きは腕ごと動かして制御、細かい動きは掌や指先で調整するのだろうと想像します。各メーカーの認識では私の持ち方は恐らくモバイル型に分類されているのではないかと思いますが、モバイル時であろうがなかろうが常時この持ち方です。
自分のマウスの持ち方と同じなら、その分慣れるのにも苦労しないだろう。そう考えたわけですね。
実機を眺める
いざ入手してみると、可愛い見た目とは裏腹に色々と徹底されており、硬派なトラックボールだなという印象に変わっています。上の写真はM570との比較ですが「ここ、別に要らんよね?」と言わんばかりの勢いでパームレストが断ち落とされており、それでいて実際問題なく扱えます。もちろん当初抱いた印象の通り、私の手の置き方との相性も良いのですが、それにしても凄いでしょ。この割り切りったら本当に素敵。
ちんまくて可愛いQの、こちらは最初に購入した黒。掌が接する面はサラサラしたプラ素材でとてもいい感触。機器全体はそのサラサラプラと光沢がある普通のプラ素材の組み合わせて構成されています。比較用に並べているのは単4電池。
本当に小型なので、かぶせ持ちスタイルで掌をがっつり乗せてホールドすると、決して手が大きいわけではない私でも指先が第一関節まではみ出します。その状態では動かせるわけがないので、公式サイトの写真のように、手首は机上に接地した状態でホールドするのが正解でしょう。
操作球の固定が緩めなので、私のような脂性が扱うと、球が親指に張り付いてしまいカップの中で暴れてしまうことがありますし、持ち運ぶ時はカタカタと音がします。無造作にカバンに放り込んで持ち運んでたりすると操作球が外れていることも。
ただ、実際に操作する際は親指で押し込む形になるので、固定の緩さが問題になることはほぼないと思います。操作球の固定が緩いのにはメリットもあって、上手いことつまめば表側からでも取り出せますし、カバンの中で操作球が外れていた→操作球を戻すついでにゴミ払い、みたいな感じでメンテナンスが自然と行えたりします。
Qの裏面。写真はBluetooth版。電池ボックス、電源ボタン、ペアリング用の小さいスイッチ(水色)があります。独自無線版はこのペアリングスイッチ下側のスペースに受信機を収納しておける仕様。
写真右側に写っている穴が操作球押出とゴミの排出を兼ねたメンテナンスホール。小指の先が入る大きさは確保されています
そもそもは私自身が尻のデカいマウスを苦手にしていることも影響していますが「それでいいんだよ!」と我が意を得たり。すっかりお気に入りのトラックボールと化しました。
カラーバリエーション
Qにはカラーバリエーションが存在しますが、20年11月現在、多くの色は生産終了が告げられています。一部、有線版のみカラーバリエーションが残っているような雰囲気ですが、正直に申し上げてこのへんは「販売終了(終了していない)」みたいなこともままあるので、よくわかりません。詳細は公式サイトを当たっていただくとして、まだ若干の流通はあるようなので、欲しい色がある場合はお早めにどうぞ。白や黒といった基本的な色は20年11月時点では継続して販売されているようです。
かつてトヨタの初代ヴィッツで有名になったローズメタリックはきゃわいいですねぇ。事務のおねぇさんがこれ使ってたら恋に落ちそうです。工業製品は昔のフェンダー社のエレキギターなんかもそうですが、車のカラーリングがそのまま持ち込まれる感じで、Qのラインナップも自家用車のカラーバリエーションだと思うと腑に落ちるラインナップでした。
私は初見で白がいいなと思ったのですが、なんやかやで汚してしまう人間ですので黒を購入。マットな質感でいい感じです。結構気に入っています。
微妙に質感が違います
21年になって結局欲しいと思っていた色を買ってしまったのですが、白版と黒版とでは筐体天面の質感がちょっと違いました。私がAmazonで購入した白(Bluetooth版)の天面は普通のプラスティックで、結構光沢もあり、手触りも普通。車の色で例えるとパールホワイトとかああいう感じで若干のラメっぽさと、触るとキシキシする感じがあると言いましょうかね。対して黒版は最初にも触れたように艶消しというか半艶というか。触れてもサラサラしており、触り心地はかなりいいです。
なんてこった色によって違うのかと思い知ってから製品写真をじっくり眺めた限りでは、白版だけが艶のあるプラ素材かなぁ。赤青銀は恐らくですが黒と同じマット型じゃないかと思います。似たような色質感が採用されたものを同業他社製品で見たこともありますし。ローズメタリックもマット調でした。
実際、かつては艶ありの黒もあったらしいですから(現在は恐らく廃盤)微妙に違いますよと。私は手触りだけで言うなら断然マット型のほうが好きですが、普通に使う分にはどっちも差はないでしょう。長々と言及して来ましたが、知らなければ何も問題はありませんよレベルの話です。
接続方式
接続方式は有線/独自無線/Bluetoothの3種類でそれぞれ別の型として販売されており、メーカー希望小売価格も微妙に違います。
- 有線版
- 有線版は実測で2.5㎜幅の細いケーブルが使われています。長さは公式サイトによると約1.5mとのこと。接続はUSBのtypeA端子、昔からある平べったい接続端子です。
- メーカー希望小売価格:¥7,260+税
- 2.4GHz独自無線版
- 独自無線の受信機は本体底面に収納が可能。これは最早必須機能ですね。
- メーカー希望小売価格:¥8,550+税
- Bluetooth版
- 旧モデルはBluetooth3.0でしたが2024年の新モデルからBluetooth5.1へアップデートされています。旧モデル時の記載はそのまま残しておきますがこの点ご注意ください。Bluetooth版をご検討のかたは特段の事情がない限り2024年版の購入をおすすめします。
Bluetoothは今となっては少し古い3.0が搭載されており、連続動作時間も独自無線型とBluetoothでほぼ同じ。とはいえこれは使用頻度等で変って来ますので、あくまである程度の目安ですが、Bluetooth4.0あるいはそれ以降を搭載している製品に比べれば電池寿命は短いでしょう。その代わりと言ってはなんですが、BT3は規格が古い分、古いBTホストの機種にも繋げる可能性が高く、駆動時間と引き換えに汎用性は高いです。
試してみたところ手持ちのiPhone(iOS13.5)にも普通に繋げましたが、公式にはiPhoneへの接続は非サポートのようですね。繋げなかったからと言って文句言っても仕方ありませんよ。Android端末は繋げるようです。
- メーカー希望小売価格:¥9,260+税
3モデルとも、Amazonではだいたい希望小売価格の半分強ぐらいの価格で扱われています。
私はBluetooth版を利用していますが、何かの手違いで有線版も入手しちゃったりしています。おかしいなあ、何を間違えたんだろう。無線感度も、私が利用する限りでは極々普通に使えています。有線版は刺すだけなので楽ですが、折角の小型トラックボールなので、やっぱり無線版の方が似合っていると思います。ちんまりしていて愛嬌があります。
ボタンとホイール、クリック感覚
ボタン構成は5(4ボタン+ホイールボタン)、左右のクリックボタンに、左クリックボタン左横に縦に並べられたボタンが2つと、あとホイールボタンですね。チルト機能はありません。ホイールを回す感触はカリカリ感のない、俗に「ヌルヌル」とか「スルスル」と呼ばれるタイプです。親指型では極々標準的なボタン数とレイアウトと考えて良いのではないでしょうか。
大きめのホイール?
ここまで触れてきたように、本体は小柄なトラックボールですが、搭載されているのは割と径の大きいホイールじゃないかと思います。もしかしたら開口部が大きく取られているだけかも知れませんが、ソフトウェア的に制御することである程度は調整可能なものの、基本、径は大きいほうが長い距離を移動させるのに楽ですし、Qは手応えのないスルスルホイールなのも影響してか、ホイールを回す際に指の可動域を目一杯使うことが可能で、これはこれで結構独特の回し心地だと思いますが、悪くないですよ。
というか、スマホなんかで慣らされたんでしょうか。私はスルスルホイールは苦手だったはずなんですが、Qでホイール回している限り「そんなに目くじら立てるほどでもない」という感覚に変わっているようです。慣れていくのね、自分でもわかる。
私は中指でホイールを回す人間ですが、Qのホイールに関して、もちろん基本的な手の置き方や大きさも影響するとは思いますが、人差し指で回すより中指で回したほうが、中指の腹全体をホイール制御に使えて気持ち良いです。
静音性の貫徹
特筆すべき点としてすべてのボタンが静音となっており、その感覚は「カチッ」ではなく「コクッ」という感じですね。静音タイプを求める人は恐らくあのカチカチの高い音が癪に障るのでしょうから、このスイッチの音はそれからすると確かに静か。私はこれまで静音スイッチに縁がなくQが初めての静音スイッチ搭載機でしたが、想像していたより違和感なく、静音型への苦手意識も生まれていません。どちらでも構わないという感じです。
最近はこの静音性を重視してポインティングデバイスを選別される方も結構な数、いらっしゃいます。静音ボタンだけなら採用された機種も増えて来ましたが、ホイールまでヌルヌル型で音がしない部品で構成されているのは、発売から5年が経過しようとしている2021年半ば現在でも未だQのみ。こんなに可愛いのに意志も強いと来て、当初は味のある脇役と思っていましたが、主人公属性も秘めている気がしてきましたよ。
読取精度
ポインタ操作の精度についてですが、読み取りモードが2種類あって、ひとつが450〜1200dpi間を自動で制御してくれるもの。もうひとつが600dpi固定で、この2種類はホイール手前に設けてあるボタンで切り替えます。自動調整してくれるモードではゆっくり動かせば精細に、早く動かせばそれなりに、ということじゃないかと思いますが、私が使った程度の感覚では違いがわかりませんでした。解像度の高いモニタを据えて必死で弄ってみないと正直わからないかなぁ。とはいえ、自動可変式で違和感があるようなら600dpiの固定モードで扱えば良いわけですし、600dpiあれば普通にFHD解像度のモニタ1枚程度なら問題なく弄れることと思います。
4kとかになると話は変ってくるかも知れませんが、操作に慣れないうちは、多少親指を酷使する&操作が忙しなくなりがちですが、遅い速度で使った方がいいです。
ソフトウェア制御
特にメーカーが配布しているドライバソフトウェアのようなものはなく、あくまでOS標準のドライバで、HIDとして接続されます。基本的にボタン機能をカスタムしない私にはこれで必要にして十分。サブスイッチには標準で戻る進む機能が割り当てられていますが、それはあくまでWindows上での話で、Macの場合は戻る進むは働きません。ていうかMacOSには2本指スワイプで戻る進む機能はあるけど「戻る進むボタン」っていう感覚がそもそも無いんじゃないかな。OSとして機能は持ってるけど、それを汎用ポインティングデバイスのボタンに割り振る気がないというか。なので、ボタン機能をカスタマイズしたい場合、別途、汎用のボタン機能制御ソフトウェアが必要になるでしょう。
もちろんそれはサブスイッチの話で、ポインタ操作やメインの左右クリックボタンはWindowsでもMacでも普通に扱えます。
まとめ
冒頭に述べたように、最初に知った時から面白そうなトラックボールだな〜と興味を惹かれていましたが、実機入手後にはすっかり気に入ってしまい、今では手元に3台もある状況です。手は2本しかないのにね。
見た感じはちょっと横幅のある小型マウスみたいな雰囲気で、愛嬌全振りに見えなくもないトラックボールですが、必要最低限のスペックを満たした上に「小型」「静音」という一般受けしそうな個性も兼ね備えて、中身はガチガチのシューターです。素敵。決して高機能高級路線ではなく普及機なんだけど、かなりの個性派兼実力派でセメントもこなしますみたいな。
こういう機種に出会うとトラックボール界の明るい未来を感じます。据え置きとして主力で使うもよし、小ささを活かしてモバイル用としても使うもよし。Bluetooth版ならスマホにも繋げます。公式サイトのプレスリリースに掲載された写真がまんま私がマウスを握る形と同じでしたが、この写真を見て「あ、同じだ」と思う人にとっては、かなりの確率で相性のいいトラックボールになると思います。
いずれにせよ、どんな形でも普及さえしてくれば裾野が広がって、このQのような機種が出てくる土壌も育つでしょう。いつも見知った顔ばかりでは面白くありません。開発元のAresonさんには、Qに続く個性的なトラックボールの投入や、Qの後継機種などの開発も是非、お願いしたいところです。
私個人的には物凄くお薦めしたいトラックボールなのですが、個性派でもあるので、初心者が購入を検討される際は、できれば実機確認を。トラックボール好きを自覚してる全国一千万のボーラーズには、実用面もさることながら話のネタとしても優秀ですので是非どうぞ。主張も造りも確かなトラックボールです。
余談
Qはカラーバリエーション豊富な機種ですが、ペリックス社が販売している34㎜替球を購入することで操作球の変更も可能ですので、組み合わせは相当数に登ります。私も特にそういうつもりはなかったのですが必要に迫られることもありちょいちょい替球購入していたらいつの間にかそれなりの数揃っていたので、白ボディに合わせていくつか載せておきます。
白眉は後ろから2番目の「マット球」。これだけが艶消し処理が施されたざらざらした球で、当然滑りません。が、滑らないおかげで操作精度が上がります。他の色と違い艶消し球だけは使用感が大幅に変わる、ある種の改造グッズみたいなものです。個人的には大昔のゴム巻きシャフトローラー機のような感覚があって、これはこれで十分使える球だと思います。普段扱っていて「滑りすぎる」と感じる方は試してみるのも一興。一度は販売終了になりましたがユーザーの熱い要望に応えて復活しました。やったね!
一番最後の箱入り娘はエレコム純正の34㎜交換球です。色は赤ですがペリックスの赤とはまた色味が違います。