ERGO M575 Wireless Trackball

Logicool(Logitech)
ERGO M575 Wireless Trackball上からERGO M575 Wireless Trackball上からERGO M575 Wireless Trackball上から
型番
M575OW
型番
M575GR
型番
M575S
操作球直径
34㎜
ボタン数
5
接続方式
2.4GHz独自無線/Bluetooth
給電方式
単3電池×1
読取精度(dpi)
400〜2,000
保証期間
2年
保証期間
2年
保証期間
1年

Logicoolの新型ERGO M575ワイヤレストラックボール。2010年の発売以降、トラックボール界を牽引して来た名機M570の後継機です。

競合各社が親指型新製品をぶつけてくる中、完成度の高さで迎撃し続け、10年間に渡り定番の地位を維持したM570でしたが、2020年11月26日、遂に後継機が発売となりました。私は発売日が明らかになった翌10月29日にAmazonで注文。ひと月空けて11月25日に発送の連絡が来て、翌26日、発売日に無事手元に届きました。

初見では黒を買おうと思っていたのですがよく見てみると黒は保証期間が短い(1年)版だったので購入を見送り、「前機種M570との比較写真が映えそう」という邪な理由から白を選択しました。こんなサイトやってなければグラファイトグレー買ったでしょう。というか今になって冷静に考えると保証1年版の黒でも良かったような……。白もよさげですけど汚しますからねぇ私の場合。までもカラーバリエーションは割とどれを買ってもそれぞれに良さがあるよう思えますので、楽しく悩めていいと思います。

まず本機の外観を動画で。回転台に乗せてただ回しているだけの動画で、視点も固定ではありますが360度見られます。静止画よりこの方が伝わる情報もあると思うので参考にどうぞ。

パッケージ外観

  • M575 外箱1
  • M575 外箱2
  • M575 開封時

以前のロジのパッケージってブリスターパックのやつなんかは開封しづらくて、開封用にミシン目は入っているもののまったく意味をなさず、パッケージをカッターナイフでズタズタに切り刻んでようやく、みたいなのも珍しくありませんでしたが、最近のロジ製品よろしくシンプルな箱入りです。

このところ流行の「サスティナブル」がどうのこうのでこうなってるみたいで、困ったことに私が購入した白はグラファイトグレーよりもリサイクル成分の少ないアンチサスティナブル製品だそうです。HAHA。私は地球環境の敵になったのかな? ガイゾックに成敗される未来が見えたような気がしますが、地球環境を敵に回したくない方はよりリサイクル成分の多いグラファイトグレーをお買い上げ下さい。

ただ、開封しやすいので、御託はともかくパッケージは旧来のものよりこっちのほうが何倍も好きです。もうずっとこれでいいじゃんね。

M575 外観

M575 開封時2

気を取り直して、製品とご対面。なんか筍の皮に包まれたおむすびみたいな雰囲気が無きにしもあらずですが、いいですね。白。爽やかだ。私が使うとそう遠くないうちに薄汚れると思いますが今この瞬間は実に爽やか。白もあの、アイボリーっぽいとかグレーっぽいとかではなく、純白な感じです。マットな質感でいいです。前機種M570と比べて薄い水色になった操作球も爽やかですね。トラックボールってのはどうしてもガジェット臭強目の入力機器だと思いますが、これは爽やかだなぁ。本体パームレスト部のラインも含めてなんだか芳香剤の香りが漂って来そうな見た目してます。

ざっと全体を撫で回してみた印象では、さすが親指の巨人にして大家。手触りといい作りといい実にソツがなく、開封しにくいブリスター包装も無くなった今機種、地球環境の敵であることを除けば、文句をつけるところが見当たりません。

実機入手以前に公開されていた写真などを眺めていて、なんか引っかかる形してるなと思ってたのですが、思い出しました。昔のロジのロゴ(2代目)にソックリだ。向きは逆だけど。自社ロゴを模した製品たぁなかなか大層な代物だねえ!

接続方式本体裏面あれこれ

M575 裏面
M575 裏面 電池ボックスOPEN
M575 裏面 電池ボックス空けてUnifyingレシーバ

前機種M570から機能追加された点がここで、旧来のUnifying接続に加えてBluetooth接続にも対応しています。

ペアリングは本体裏面にある小さなスイッチを押すことで、独自無線(Unifying)接続とBluetooth接続が切り替わります。うちの個体は最初はUnifyingに設定されていたようで、一度スイッチを押すとBluetooth接続に切り替わり、PC側で認識、という流れでした。中心部のステータスランプは、Unifyingでの接続試行時はオレンジ色に、Bluetoothの場合は青色に点灯します。

私はBluetoothで接続して動作テスト。制御ソフトウェアは未インストールのOS標準で弄り始めましたが速攻繋がりました。最初に認識させようとする際、各社微妙に差があったりするんですけど、一体何が違うんでしょうね。まぁ認識を終えてしまえばあとは大差ありませんし、実用上まず問題ありませんけど。

一応、Unifying接続でレシーバを差した端末と、Bluetooth接続で設定した端末とで、切り替えながら使用することも可能じゃないかと思います。切り替えスイッチが本体裏面にあるので簡単お手軽とは行きませんが。

電池ボックス蓋は例のあのタイプですが、最近はこの蓋の構造もだいぶこなれて来たようで、硬すぎず軟すぎずのちょうど良い感じで開きます。蓋の裏面に補強が入っている辺りはちょっと凄いですね。他所の機種ではあまり見た記憶がないので、Logiさん業界第一人者の面目躍如と言ったところ。Unifyingレシーバは先代と同じく電池ボックス内に収容可能。

操作球は小指の先で押し出せます!

表題の通り。これ、大事。ホント大事。ロジさんMX ERGOでやらかしてるので少し心配していましたが、実測でφ12.3㎜前後、M570とほぼ同じか気持ち大きい程度の、ちゃんと小指の先で押し出せるだけの穴が確保してありました。掃除の際にイラつかなくて済みます。ここは幸塚のおじさん満点あげちゃう。

操球感覚

いいです。というかそりゃ天下のロジさんですからね、いや実にいい。違和感がない。操作球はスムーズに動いてくれるしポインタ追従性も見事。解像度切替みたいな機能はあるのかどうかすら不明ですが全く問題なし。親指型も色々弄ってきましたけど、やっぱロジの親指型が頭一つ抜けてる感あります。どこがどうとは言いにくい微妙な話だろうと思うんですけど。

他の親指型も、その機種だけ触っている分には問題を感じないんですが、ロジの親指型触ると「やっぱ本家本元は違うね」と思ってしまう何かがあります。MX ERGO触った時もいいと思いましたが、M575も負けず劣らずいいです。私的には余計な装飾なんかがない分、M575のほうが好きかな。

うちのサイト、レビューページは当該機種(今回はM575)を使って作成するという一応の約束があるので、当然M575を使って書いてますが、最初からテキスト選択なんかもズレることなく、まったく問題なく制御出来ています。今日から親指型に乗り換えても大丈夫な程度に動かせてるなぁ。撮影した写真をPhotoshopで弄ったりhtml弄ったりOS上でファイル弄ったりブラウザで確認したり色々せせこましいことやってますが、まったく支障なし。私の場合ベジェ曲線が扱えるかどうかという基準があって、そっちはまだ試してないので今すぐ乗り換えたりはしませんけど。

とにかく、操球感覚はとてもいいです。さすが御本家。

先代M570使用時と比較して、M575は入手初日から妙に狙ったところに止めやすい感覚がありました。何故でしょうねぇと疑問だったのですが、解像度自動可変式のセンサーが効果を発揮しているのだろうと思うに至りました。

解像度自動可変式センサーはLogi機ではMX ERGOから採用されまして、M570が540dpi決め打ちなのに対し、MX ERGO以降はオートマチック。M575の場合は400〜2,000dpi間を自動で加減速してくれます。

M570の場合、ポインタ移動速度の調節は、大まかな出力をPC上で設定した上で、あとはOSやデバイスドライバが持っている加速度調整と、実際に操作球を転がす緩急で調節しますが、広大な(高解像度な)モニタを相手にした場合、操作球が34㎜と小さいので、親指先での出力調整が難しくなります。

そこで、そもそもセンサーが、ユーザーが操作球を転がす際の緩急(によって発生する信号の強弱)を適切に増幅、あるいは減衰させる、ゆっくり動かした際は低解像度(低速)、素早く動かせば高解像度(高速)と、自動でアクセルを補助調節してくれると。

このアクセル補助調節の微妙なさじ加減。恐らくは世界中探してもLogiさん以上にデータを持っているメーカーはないでしょうし、実際絶妙な調整具合になっていると思います。決して親指型が得意ではない私もすんなり馴染めました。

基本的にセンサー屋さんが販売しているマウス用既製センサーを買ってきて搭載するだけの他社と違い、Logiさんはセンサーを自製できます。M575はその辺りの、現時点ではLogiさんにしか出来ないであろう、トラックボール向け秘伝の調整みたいなものが施されているのかも知れませんね。

一方で、M570式の軌道に慣れていた人からすると、このオートマチック可変解像度には違和感があるかも知れません。M570のポインタ移動感覚は、細かい速度可変がない分、軽快です。逆にM575は慣性が効いているかのような動きをするので、ちょっと触った限りでは「重い」とか「遅い」と感じることもあるでしょう。しかし私はM575の感触の方が好きですし、モニタ解像度が大きくなる、または複数モニタを繋ぐ、といった感じでポインタが移動する場所が広くなればなっただけ、この可変解像度が効いてくるでしょう。乗り換え当初に違和感を覚えたとしても、私はこのM575の感覚に慣れる方向を推奨しますし、それでもイチからトラックボールの操作を覚えるのに比べれば乗りこなすまでの時間はかからないと思います。そのへんは「こっちに慣れよう」という意識の問題の方が大きいかと。

なぜ一度マスターした感覚を捨てて一々やり直さないといけないんだと煩わしく思うのも解りますが、PC周りってトラックボールに限らずそんなことの連続です。しゃーない。

M575 正面M570 正面

ボタンとホイール

M575とM570 ボタン部比較1
M575とM570 ボタン部比較2

これもぱっと見はM570と大差ありませんし、ボタン数そのものも変わりありませんが、メインの左右クリックはM570と比較して微妙に大きくなっていますので、その分、押せる範囲が広くなっています。中身のスイッチは耐久性は変わらないそうなので、持病のチャタリングは……酷使していれば普通に起きてしまうでしょうね、恐らく。まぁ仕方ありません企業のサスティナブルのためです。

感触は悪くないです。M570と比較するとなんか違う気もするんですが、それはスイッチ部品の作りだとか本体内部での音の反響だとか色々細かい事情も絡んで微妙に変わるでしょうから、基本的には同じかな。クリック音はM575のほうが全体的に静かな気がしますが、これは私のM570が経年劣化で音が大きくなっているだけかも知れませんので、正確なところはわかりませんが、少なくとも「ある程度くたびれたM570より静かですよ」とは言えます。

人差し指で押すであろうサブスイッチは平坦になりまして、人によっては前のほうが良かったという意見もあるかも知れませんが、この手のボタンを使わない私に取っては別に……。感触からするにタクトスイッチだと思いますが……これ、静音型じゃないかな? ホイールクリックも同様。サブスイッチ類は横から見るとちょっと浮いているので、見た目はあまり好きではありませんが、重箱の隅です。実用上は問題ありません。

ホイールは昔ながらの全面ラバーつんつるてん式。角度こそつけてありますが、部品等はM570とほとんど同じに見えます。ホイールを回した際のカリカリ感は若干違うような気がして、M570のほうが回した際の音も手応えも大きく、M575は静かでよりスムーズな気がしますが、比較対象にしている私のM570のホイールはだいぶガタが来ており、キコキコと異音混じりで鳴き始めている状態なので、このへん細かい話はM570を常用していたユーザーのレビューを当たったほうが良いでしょう。多分山ほどあると思います。

このホイールが鳴き始める症状、T-BB18の頃からTrackMan親指型の持病だと私は認識していたのですが、冷静に考えてみるとweb上ではあまり同様の報告を聞いたことがありませんので、私に原因があるんでしょう。M575との相性はどうだろうなぁ。

ホイールクリックは角度がついた分押しやすい気はしますが、これも私はほとんど使わないので、どうでしょうねぇ。もちろん感触そのものはいいですし、カコカコという音もM570のものよりだいぶ静かですが、上記した通りうちのM570のホイール周りは結構アレな状態ですので、正確な比較は出来ていません。

全体として細かい違いはあるような気はしますが、M570の操作感覚を損ねるような極端な変更は行わず、M570の味をきちんと意識した上で調整されていると思います。そりゃ神経網が完全にM570と接続されている人にとっては違和感もあるでしょうが、じき慣れるだろうとも思いますよ。

本体の傾き感

M575とM570 ボタン部比較1
M575とM570 ボタン部比較2

両機種を上から眺めたところ、新型M575のほうがより三日月型と言いますかね、逆くの字に曲がっていて、M570は操作球から後ろ(Logiのロゴ側)は意外とまっすぐ。ここが手を載せた感覚に一番違いを生んでいるかなぁ。感触としては……難しい。数ミリ程度ですが背も高くなっていますので、M570よりは若干傾いた形で手が乗るような気もしますし、あんま変わらない気もする。うん。親指の付け根が乗る辺りに本体が曲がって伸びているM575のほうが、おかげですこーしだけ傾くかなぁ。という感じですが実に微妙。

でも不思議なもんで、握り比べしてる限り、私はハッキリとM575の感覚の方が好みだと感じます。角度がついているからなのか、表面処理の違いからくる感触の違いからなのか、自分でもまだよくわかりませんが、仮にブラインドテストみたいなことを行ったとしても、多分M575の方を選ぶと思います。

全体的に、M570のほうがぽってりしていて、エッジも立っておらず、丸っこい握り心地ですが、M575は線もハッキリしていて、メリハリが効いてる気がします。大きくは違わないけど、別の感覚でもある、というような微妙な感じですね。微妙って言ってますけど悪い意味ではなく、いい意味です。それこそ微差だけど大差的な。

M570と比較して思うこと

M575とM570 大きさの比較
全長全幅全高
M575134㎜100㎜48㎜
M570145㎜95㎜45㎜

共にメーカーが公表している数値です。これを見る限りM575は全長だけが少し短く、全幅と全高は大きくなっていますが、実際に手を載せてみた感覚ではあまり差は感じませんでした。

全長は9㎜ほどM575が短くなっていますが、ここはほとんど気にする必要はないと思います。

全高が3㎜高いのは、微妙なさじ加減の上で成り立つトラックボールの使用感覚からするとかなり大きいと思うので、M570をひたすらに愛用していた人にとっては違和感もあることでしょう。ただ、全幅も5㎜ほど大きくなっていますので、掌が乗る面の角度は、ある程度M570に似せてあると思います。

TrackManWheel 華麗なる一族

  • T-BB13上から
  • T-RA18上から
  • T-BB18上から
  • M570上から
  • M575上から

ここはM575とM570を比較する項目のはずですが、M575の特徴を語るには前機種のM570を語る必要があり、またその特徴のネタ元は更なる前機種T-BB18が……みたいな状況から、結局最初のT-BB13まで引っ張り出してくることになりましたとさ。短く適当にまとめてページ数を稼いだほうがGoogle先生の覚えも目出度いんでしょうけどその手には乗らない。私は思いついたことを書き散らします。基本的には余計な話だと思いますので興味ない人は以下は飛ばしてください。

ということで週末を迎え一念発起してT-BB18を発掘清掃しましたので、これで一応写真を並べながら話が出来ます。案の定加水分解始まってるしこの時代の塗装は弱いんで、写真にするとそんなでもないけど実物は相当ヤレて見えるし、こんなになるまで放置してゴメンなぁ……と良心も痛みますが、ともかく、私のトラックボール遍歴の中で期間としては短いですが親指ボーラーだった頃の愛機がこのT-BB18です。当時はこれかTrackballOpticalぐらいしか選択肢もなかったですけど。

ちなみに随分と使い込んで見えなくもない私のT-BB18ですが同機種を利用されていた方ならお分かりのこと、たいして使い込まなくてもこの程度までは普通に塗装が剥げます。本格的に使い込まれたT-BB18は塗装の下地まで剥げ散らかしますから、私のT-BB18なんてこんなナリでもまだ慣らし運転が済んだとこぐらいです。

T-BB13はエレコムのEX-G PROをレビューした際に引っ張り出していたのですが、偶然か必然かM575はT-BB13に回帰しているところがありますので、この華麗なる一族は円環構造にもなっているのです。以下でその話に触れて行きます。

TrackManWheelは私的年表でも触れていますが元々はホイールのない3ボタン式の親指型で、名前をTrackManMarbleと言いました。現在も生き残っているトラックボール界の森繁久彌ことマーブルさんとは同姓同名の別人です(森繁さんも亡くなられてだいぶ経ちますが他にいい例えも思い当たらないので)ちょうどスクロールホイールが世に出てくるタイミングの生まれだったこともあり、のちにホイールを搭載してTrackMan Marble+となり、接続方式をUSBにして登場したのが最初のTrackManMarbleWheel(T-BB13)です。マーブルが付くとややこしくなるので全部ひっくるめてTrackManWheelと呼んでますが、以後は一応、型番のT-BB13で表記します。

2020年は新作ラッシュに見舞われたのですっかり忘れがちになってしまいましたが「トラックボールには大量絶滅期があって、それはスクロールホイールによってもたらされた」と私は考えています。その点、マウスを模した形で生まれたTrackManWheelはスクロールホイールの搭載方法に悩む必要がなかったので、T-BB13の時点で大まかには完成しています。

私の記憶では、今回引っ張り出してきたT-BB18から、掌の中心部分にグッと食いついて来る感覚がありました。昔のジューサーみたいな感じと言えば伝わるかな。輪切りにしたレモンとかオレンジを絞るやつ。メキシコのソンブレロみたいな形したあれ。掌の中心で本体を抑えるような感じ。うん。伝わらないだろうし、伝わったとしても同世代とそれより上限定だろう。

T-BB13とT-BB18 上から
T-BB13とT-BB18。何を思ってこんな傾けて撮影したのか、数分前の自分の意図が思い出せず困惑していますが、大方なにも考えてなかったんでしょう。そんなノリで撮ってるもんだから伝わりにくいですが、T-BB18はだいぶ小型化しています。尖ってますねぇT-BB18。実際に据え付けて利用する際は写真とは逆の向きに傾けて置くのが普通だと思います。
T-BB13とT-BB18 斜め前から
両機種の高さの違い、操作球とボタンとの距離の違いなどが、ある程度は伝わるかと思います。T-BB18はT-BB13からすると結構あれこれ変更されていて、大雑把な見た目こそ一緒ですが別の機種と言ってもいいぐらい違います。何度も言ってますが私はT-BB13のほうが好きでした。けど長期間利用したのはT-BB18だったと思います。自分でも不思議です。
T-BB18とM570 上から
そしてT-BB18とM570を並べる。よく似てます。T-BB18のほうが下膨れしてて、その分掌を載せる範囲が広いのですが、その配慮が私にとってはどうも。あんまり尖ってたんで怒られたのか、歳をとって角が取れて丸くなったのかM570。時代的な流行り廃りもあると思いますけど、そのおかげか広く世間に受け入れられます。貧弱な塗装もしないほうがマシと気づいてくれたかなLogi。まぁT-BB18の塗装の剥げかたは歴戦の勇者感が出るんで嫌いではないですけど。
両者、背の高さも同じようなものですが、T-BB18のほうが若干高いかな。それもあって掌中心に食いついてくる感覚があり、長いこと使ってると聖痕が刻まれそうです。確かに手にぴたーっと来る感じは強いので、その感覚を気に入る人も多いと思います。でもねぇ私はそれが苦手なのよ。TrackManWheel一族に限らず、握った形で手にフィットすることが全肯定されるとは私は思いません。EXPERT MOUSEやSlimblade Trackballは握った形なんか考慮されてませんが、いい機種ですからね。
M570とM575 上から
うひゃひゃひゃホンマ白の撮影は地獄やで。もう二度と白機体は買わないと誓うところですが、撮影を考えなければ凄くいいですよ白。キレイだし。見難いんですが、雰囲気こそ似ているもののこの2機種は微妙に違っていて、M575を持った感覚はT-BB13に近づいていると思います。ちょうど中間を狙ったような感じなのかなぁ。

M570はT-BB18よりもう少し掌中心への食い込みは弱めてあったように思いますが、それでも本体を抑え込むポイントは掌中心付近にあったと思います。本体そのものは比較的小柄だったので、「掴む」感覚が強いトラックボールだったと。

私はこのT-BB18以来の聖痕感覚が苦手で。生まれも育ちも多神教国家ですし。それよりも、四指の付け根の指尖球部と呼ばれる部分で抑え込みたいと感じる人間なのですが、新型M575はかなり私好みの感覚になっています。掌中心部に来ないわけではないのですが、若干本体が大きくなったおかげか、掌中心で抑え込んでいる感覚が薄くなったのかな。

実際M575はかなり気に入ってまして、通常であればレビューを終えたトラックボールは神棚に祀って二礼二拍手一礼を済ませたあと、プチプチに包んでトラックボール入れ(段ボール)にナイナイして、愛機DEFT PROを引っ張り出してくるところ、しばらくの間、普通にM575を使っていました。のち、ホームページの「おすすめ機種」欄にM575を掲載する際、作業が色々と込み入ったのでDEFT PROに戻しましたが、途中まではM575で、大きく不自由することなく作業していました。作業への注力度合いを一段階上げようと思った際にはじめて不自由した、というかやっぱり慣れているDEFT PROのほうがいいと身体が叫んだような感じで。

つまり、普段の軽作業から、もうちょっと忙しい作業ぐらいまでであればM575で十分に使えると。あくまで私の場合はですが、これは旧機種M570では無かったことです。

私が思うに、M575は「手を置く」型に近づけてある。これは各種レビューページで時々触れていることなのですが、トラックボールには「手を置く」型と「手で握る(掴む)」型があって、私は「手で握る」型はあまり好んでいません。なんでと問われても感覚的な話なので「ならぬものはならぬのです」としか答えられませんが、どっちがいい悪いの話ではなく感覚的な好みの話だと思います。私は汗っかきなので、掌がぴったりとフィットする設計の機種を握るとすぐ掌に汗をかきます。これが苦手なんです。

これまでレビューしてきた親指型の中でいうと、エレコムのEX-G PROが置く型だったと思いますが、M575もEX-G PROほどではないにせよ「手を置く(載せる)」型に近づけてある気はします。ここで触れたように元を辿れば初代のTrackManMarbleがその形だったので先祖返りしただけなんですが、ぐるっと回ってもとに戻ってきたと考えると……都合25年、四半世紀ぐらいか。なかなかの旅路でしたね。

T-BB13とM575 上から

ただ、恐らく世界一の普及率を誇るトラックボールの後継機である以上、T-BB18以来の「掴む」感覚を一気に無くすわけには行かない。故に、なんとなくですが掴む感覚も残っている。ここの調整具合が絶妙で、M570を愛用されていた方でも、恐らく数時間使っていれば慣れるように……なってるんじゃないかなぁ。そこは私には再現不可能なことなので、断言は出来ませんけども。

まとめ

M570の後継ということで注目度もケタ違いのERGO M575だと思います。私は前機種のM570を「常用していない」人間なので、常用者からはまた違う感想が出てくるだろうとも思いますが、少なとも私が弄った限りでは、ちゃんとM570の後継でありつつちゃんと新型っぽいという、実に難しい課題を見事にこなした機種だと思いました。

特にトラックボールは、一旦ある程度の安定飛行航路に乗ると製品寿命が長く、長い販売期間を経てようやく新型が出ても「名前が一緒なだけでぜーんぜん違う」みたいなこともままありますし、そのせいで旧機種から乗り換えられない難民が発生、結果として旧機種がゾンビ的に生き永らえたり、中古品にプレミアがついてしまったり、みたいなことになりがちですが、M570からM575の間ではそういうことがあまり起きなさそうな気がします。上でも述べましたが「後継機でありながら、ちゃんと新機種」になっているのは、結構凄いことだと。トラックボールに限らずマウスでも、こういう幸せな世代交代が行われそうなケースってのは案外少ないんじゃないでしょうか。M570が販売終了となるならないに関わらず、極々当たり前に親指型の入門機にして決定版と推薦できる機種になっていると思います。

カラーバリエーションも、どれを選んでもそれぞれに良さがあると思いますし、ロジさんやってくれました。この感じだと「どうしてもチルトホイールが要る!」という人以外は全員M575でいい気がします。2020年代のトラックボール界の顔役はM575に決まったんじゃないかな。多分。

とはいえ恐らく地球上で最も普及したトラックボールの後継機ですから、それだけ小姑の数も多いわけで、今後は世界中のあっちこっちで色んな評価が出てくることだと思います。私個人的に普段はあまり他所のトラックボールレビューみたいなものは見ないようにしているのですが(影響されてしまうので)M575に関してはある程度は常用者の意見も拾っていかないとなぁ、とも思っています。

元々はそういう情報を拾って回るのが好きで、それが高じて今に至っているわけですから、結構楽しみにしています。私の見解はあくまで「フィンガー型が好きなトラックボーラーから見た親指型M575」への評価です。親指型のヘビーユーザーは、果たしてどんな評価を下すんでしょうね。

M575とM570とMX ERGO

あとやっぱ白は写真撮影が困難でしたよ……。

 実機入手以前の評

ERGO M575 入手以前の評

競合各社が親指型新製品をぶつけてくる中、完成度の高さで迎撃し続け、10年間に渡り定番の地位を維持したM570でしたが、2020年11月26日、遂に後継機が発売となります。先週AmazonのセールでM570を買った人の恨み節が聞こえる? いえ。滅多に新型の出ないトラックボール界で入れ違いを経験するのは、世紀を跨ぐとか新元号発布を見るとかそのレベルの貴重なことですので、後々笑い話の種が出来たと思って下さい。普通なら前の型が終売になってそこで終わりなんですよこの世界。

まだ情報が少ないので公開された写真などからの想像でしかありませんが、なんせここ10年トラックボール界の顔役だったM570の、メーカーがそう宣言している正式な後継機種ですので、見どころはたくさんあります。

発売前注目点

  • Unifyingに加えてBluetooth接続にも対応

    M570が発売された当時、Bluetoothは省電力方面の性能が怪しかったこともあってか、独自無線(Unifying)のみの接続方式でしたが、M575からはBluetooth接続にも対応しています。Bluetooth接続に対応したことで、スマホやタブレット端末への接続も容易になりますから、利用範囲も広がります。

  • 単3形電池駆動

    電池寿命はUnifying接続方式の方が若干長くて最長24ヶ月、Bluetooth接続で20ヶ月だそうですが……4ヶ月を若干って言っていいのかな。DEFT PROだとその期間に電池2本要るけど。ともかく省電力性能に定評のあるLogi社ですから、この数値はあくまで最大値だとしても、1年ぐらいは軽く持ってくれそうです。凄いなぁ。

    私個人的には「バッテリー寿命≒製品寿命」となりがちな充電式電池より、乾電池式の方を好んでいますので、M570から引き続きで単3形が採用されたのは福音です。おまけに長寿命と来ていますからね。この点まったく文句なしです。

  • チルトホイール“非”搭載

    M575 正面から
    M570 正面から
    MX ERGO 正面から

    唯一ここだけが不満、という人も多いんじゃないかと思います。私はチルトホイールは使わない人間なのでまったく問題なしというか、それで丈夫に作れるとか長持ちするとかの効果があるならむしろ非搭載にしてくれと思うクチですので構わないのですが、まぁ仕方ないですよね。これでチルトまで搭載してたら上位機種MX ERGOの立つ瀬がなくなりますもの。

    普通に考えれば今どきチルトホイールなんて珍しい機能でもありませんし搭載されてても不思議ではないんですが、上位機種との兼ね合いでそうも行かない、みたいな邪推をすると、ミラーレス機を出したいけどそれやるとメインの一眼レフ機が売れなくなっちゃうとまごついている間にSONYに市場を荒らされまくったキヤノニコの姿が思い出されたりもします。守るべきものがあると戦うのも大変ですね。

    3機種を並べて見ると、M575の筐体はMX ERGOをベースにして、ホイール部品はM570と一緒、みたいな感じでしょうか。個人的にですがこの傾いたホイールって大丈夫なんですかね。耐久性的な意味で。サンワサプライのMA-BTTB130の時にも思ったんですけども。

  • 読み取り精度UP

    Logiさん曰く解像度は2,000dpi(初期値:400dpi)だそうです。段階を踏んでの切替式なのか可変式なのかその辺りはまだ正確な情報を見つけられていないのですが、本体裏面の写真を見ても解像度切替機能的なボタンらしきものは見当たらないような気がするので、ソフトウェア上で設定するか、400〜2,000の可変式ですかねぇ。最大2,000dpiか。M570と比較して約4倍。凄いですね。MX ERGOに搭載されていた精細(減速)モードはないようです。ソフトウェア的に機能搭載されているかも知れませんが、もし400〜2,000dpiの可変式なら「減速させたいときはゆっくり動かせ」ってことになるかと思います。想像ですよ。

  • カラーバリエーションもあるよ

    M570と同じようなグラファイトグレーに加えて、白と黒が準備されているようです。うーんこれは悩むなぁ。私が買うなら黒かなぁ。正直に言うと欲しいのは白なんですけど絶対汚すからなぁ。どれを買ってもそれぞれに良さがありそうなカラーバリエーションで、これは本当に悩みますね。写真で見る限りマットな質感っぽいのも好みです。

    ……米国サイトで情報漁ってると黒がないのでおかしいなぁと思っていたところ、どうやら黒は保証期間が1年と短く、その分価格が多少安価な、なんだろこれ日本国内版みたいな感じなのかな。前機種で言うところのSW-M570みたいな。うーん。どうせメインで利用することはないだろうから1年保証版でもいいけどなぁ、困ったなどの色買うべ。白か。白……。写真撮影が面倒そうだなぁ。

  • 操作球取出口もそれなりの大きさ?

    上の写真を見る限り、操作球取出口も相応の大きさが確保してある……かな? うん、MX ERGOよりは大きくなってるみたい。これはトラックボールの直接的な操作感覚には関係しないのですが、メンテナンスの作業効率に影響して来ますので個人的に重視しているポイントです。ほか、裏面には電源スイッチと、接続方式の切り替えボタンかなこれは。Bluetooth接続時のペアリングボタンも兼ねているのかどうなのか。UnifyingレシーバはM570と同様に電池ボックス部に収納可能と。

  • スイッチはどうなんでしょうね

    旧機種となったM570に対する不満として世間的に大きかったのが、とにかくボタンがチャタる、というものだったと思います。実際問題として、決して高耐久ではない普通のスイッチが採用されていたのは事実のようですが(あくまで普通であって劣悪ではない)M575は果たしてどうなのでしょうね。なんか米国のサイトではリサイクル対応のプラスティックを採用してサスティナブルがどうのこうのと御高説を垂れてますが、まぁそれはそれでいいことだろうけど、こっちが知りてぇのはそういうこっちゃねぇし、本当にサスティナブルにしたいなら超絶に頑丈な(廃棄する必要がない)製品作ればそれが一番じゃないの。

    私、基本的には他の情報サイトは見ないようにしてページ作ります。作って公開した後も極力見ないようにはするんですが(影響されてしまうので)M575に関しては注目度も高いですから情報入ってきちゃうんですね。小耳に挟んだところによると、スイッチはM570と同じものが使われているようです。

    うーん、そうかぁ。まぁ、仕方ないか。

2020年を象徴する機種となるか

2020年のトラックボール界は、Kensingtonの親指型ProFitErgoVerticalに始まりTurboRing2020(世を忍ぶ仮の姿でOrbit Fusionと名乗っている)、そしてERGO M575と、完全な新型から定番製品の後継機まで賑やかな年になりました。LogicoolとKensingtonの2社が相次いで新型を投入してきたのには、新御三家入りを果たしたエレコムの猛攻に触発されて、みたいなところもあるのではないかと思います。やはり競争は大事ですね。

ともかく、親指型大本命の登場です。大いに期待して発売日を待ちたいと思います。

M575は米国でも販売されている白とグレーに加えて、日本国内版なのか黒が発表されています。この黒版(M575S)のみ保証期間が1年で、その分価格が少し安くなっています。購入を検討される方はこの保証期間が違う点にご注意下さい。

24年現在世界で最も普及しているであろう34㎜操作球には交換球が存在します。最も代表的な交換球が独ペリックス社の交換球で、カラーバリエーションがあるので着せ替え的にコレクションしている人も結構居られるようです。最盛期はもう少しバリエーションありましたが最近は厳選モードに入った模様で一部消えたりもしていますので、詳細はリンク先でよくご確認の上ご購入下さい。
白眉は後ろから2番目の「マット球」。これだけが艶消し処理が施されたざらざらした球で、当然滑りません。が、滑らないおかげで操作精度が上がります。他の色と違い艶消し球だけは使用感が大幅に変わる、ある種の改造グッズみたいなものです。個人的には大昔のゴム巻きシャフトローラー機のような感覚があって、これはこれで十分使える球だと思います。普段扱っていて「滑りすぎる」と感じる方は試してみるのも一興。一度は販売終了になりましたがユーザーの熱い要望に応えて復活しました。やったね!
一番最後の箱入り娘はエレコム純正の34㎜交換球です。色は赤ですがペリックスの赤とはまた色味が違います。