SlimBlade Trackball

Kensington
SlimBlade Trackball上から
型番
72327JP
操作球径
55㎜
ボタン数
4
接続方式
USB有線接続
給電方式
USB給電
保証期間
5年

SlimBlade Trackball誕生から数えること13年目。きっと待ち望んだ人も多かったでしょう、無線接続に対応した「SlimBlade Pro」が発売されました。事前予約の段階では数もそう多くなかったようで、なかなか追加の予約分が並ばず多くの人をやきもきさせましたが、いざ発売されてみると充分数も揃えられていたようで、現在Amazonで普通に購入可能な状態で販売されています。

Proは有線、独自無線、Bluetoothの3way接続に対応。解像度変更機能なんかも搭載しちゃったりして、定評があった基本の使い勝手はそのままに今時の機能にも対応。見た目も全般的に黒っぽく落ち着いた雰囲気に変貌を遂げて、想像していた以上に格好良いモデルになっていました。

色んな意味でマイペースなKensington社のSlimBlade Trackballは、体感的に大量絶滅只中だった09年に、突如として、何の前触れもなくポンと市場に投下されました。

それまで、00年代初頭に隆盛したのちは対処療法のみで根本的には変化がなかったおかげで、ぱっと見だけでも全体的に古風な香りを漂わせていたトラックボール界に、突然、09年当時の今風な質感を持った最新型トラックボールが出現したため、界隈は妙な盛り上がりを見せていたことを思い出します。

09年に発売されて既に10年余が経過していますが、基本性能は発売当時に完成されており、2021年現在でも普通に主力として活躍するトラックボールです。以下で細かいことに触れますが、SlimBlade Trackball(以下、SBT)は見た目も大変美しいトラックボールで、一目惚れする方もいらっしゃると思います。そういう場合、細かいことは気にせず購入しましょう。期待を裏切られること、皆無とは申しませんよ。どうしたって相性はあると思いますから。でも、少ないと思います。中古などでなく正規品を購入すれば5年保証も付いていますので、長く使えます。初期導入費用は少し高いですが、5年使えば楽々元が取れますし、10年愛用されている方もそう珍しくはありません。

どのトラックボールにもそれぞれ良さがありますが、SBTの場合は全周動画を「はえ〜きれいやね〜」と、うっとり眺めてしまう、名実ともに艶があります。個人的には歴代Kensingtonトラックボールの中でもちょっと毛色の違う美しさを持っていると感じるのですが、その正体は何なのでしょうね。

SlimBlade 内緒のアップデート

Kensington社っちゅうのは妙なところでしてね。EM7のページにもちょいちょい書いてるんですが、製品を誰にも言わずにしれっと仕様変更したりするんです。EM7なんて発売最初期からすると別物……は言い過ぎですがだいぶ仕様変わっています。それは次々と生まれては消えてゆくのが当たり前のPC周辺機器界にあって、ひとつの製品を10年単位で販売し続けるマイペースなところから来ているのでしょう。

SBTも発売から既に10年以上経過していますが、21年夏頃、Amazonで販売されているSBTに「新モデル」なんていう物騒な文言が踊りまして、とは言え見た目にはなんの変更もないように見受けられ、なにが新型なのさ? 状態でした。今にして思えばあれが数少ない公式からのお知らせだったのでしょう。まどーもこれSBTに限った話でなく、ほとんどの機種で何か変わってそうなんですけどね。

ということで此度のアップデート、現時点で判っている中で最も大きな変更であろう点を。従来のSBTは、諸般の事情により四つあるボタンのうち二つが、PCにただ繋いだだけでは機能してくれず、活用するにはSBTに対応したデバイスドライバが必要という困った仕様を抱えていました(Linuxは例外だったそうです)

なんでそんな仕様なのかについては後述するとして、21年夏ごろのアップデート以降、現在流通しているSBTは上二つのボタンも対応デバイスドライバを介さなくてもHIDに準拠して動いてくれるようになりました。

このボタンの旧仕様は数少ないSBTの困った点で、ドライバを入れれば動く=ドライバがなければ動かないわけです。そりゃ自宅で自分用にどうとでも出来るPCならいいですが、PCを使用する環境はそれに留まりません。近年は、例えば職場のPCに外部から持ち込んだポインティングデバイスを繋ぐぐらいまではなんとか許可してもらえるとしても、任意のドライバやソフトウェアのインストールは許可されないほうが普通だと考えるべきで、そうなると決して小さくはない本体に4つもボタンあるフリして使えるのは2個かよ、みたいな状態になってしまうのです。

SBTが発売されたのは2009年。この頃のPCはTV受像機だとか、ビデオ機能、オーディオ機能などを統合する環境としても注目されており、そういや同じ時期に買ったMacBook Proにも白いリモコンが付属していてOSを立ち上げなくても独立してCDとかDVDを再生可能みたいな機能がありました。SBTもそういう機能を制御するデバイスとしても使えまっせ的に、例えばボリュームコントロールですとか、頭出しとか早送りとか。ええ。なんだそれどーでもいいだろと今なら思うでしょうがというか当時も思っていましたが、そういう方向に夢を見ていた時代があったのです。まぁ別にKensingtonさんに限った話ではなくこういうおポンチな流行ってな多かれ少なかれあるもんですが、SBTのそれも早々に負の遺産となり、冒頭に述べたように通常であれば数年で全てが刷新されるところ、K社さんはマイペースですのでながーいことそのまんまでしたが、この度めでたく解決されたということです。特に気にしない人にとっては何てことない話ですが、小躍りする人も居ることでしょう。

唯一無二のスクロール感覚

SBTはその容姿端麗ぶりもさることながら、スクロール機能にも唯一無二の特徴があります。トラックボールにとっての難敵、スクロールホイールに対し、スクロールリングという対抗策を生み出していたKensingtonですが、SBTでは操作球を捻ることでスクロール機能を実現させる発展型を提示。ポインタ操作とスクロール操作を、ひとつの操作球を扱いながらその回転方向だけで切替可能なのはなかなか驚異的で、慣れると癖になる操作感覚です。

「捻る」と、公式もそう表現していましたが、実際どうなっているのかというと、操作球の横回転を読み取ってスクロールに反映させています。

このSBTスクロールリングの操作方法は静止画では伝わりにくく、文字ではもっと伝わりにくいうえに「捻り」という言葉のイメージが強すぎて、弄ってみれば簡単な話なのですが誤解もされやすそうなので、少し説明してみます。実際、ひとことで表せと言われたら「操作球を捻る」になりますが、例えば操作球を上から鷲掴みにして蛇口を捻るように回転させてスクロール、みたいな野蛮な扱い方をするわけではありません。いや、それでも動かせますけど、それでは常用するのに動作が少し大袈裟です。

ではどうするのかというと、操作球周辺の、いかにも「ここを触ってください」的に配置されているメッキ部。土星の輪っかみたいですね。このメッキ部は操作球側(内側)へ向けて傾いており、指先を置くと、指先側面が操作球に軽く触れます。その状態で円周メッキに沿って指先を動かすと、操作球が指との摩擦に引っ張られて横回転し、「チキチキチキ……」と内蔵スピーカからの小気味良い音と共にスクロールが発動します。

SBTリング部に人差し指

写真は解説用に人差し指1本を置いていますが、実際には操作球に指を載せた状態で、自分が操作しやすい指をスクロール操作に当てます。私の場合は主に時計回りの回転に薬指、反時計回りの回転に人差し指のチェンジアップ型で保持し、あとは横回転の軸がブレないように操作球の頂部を軽く中指で押さえたりしますが、このへんは各人それぞれ具合の良いやり方があることでしょう。操作に習熟した人ならポインタを一切ブレさせることなくスルスルとスクロールさせることも可能ですが、案ずるより産むが易し。あれこれ悩むより触ってみるのが一番早いですし、説明が面倒臭い割に、実際に動作させるのは簡単なので、身構える必要はありません。一見して理解しにくいだけで、本当に簡単です。

うーん。凄いよね。私はスクロールにカリカリの感触が欲しい人間ですが、音が出るだけですっかり満足、なんなら感触も発生していると錯覚するほど。音で騙されて満足しちゃう自分の感覚のいい加減さに驚いたもんね。実際にラチェット機構的なものを組み込んで感触を重視したLogi、音を利用して満足させたKensington。トラックボールではありませんが、振動機能でクリック感を演出するAppleのトラックパッドなんかも(Appleが純正MightyMouseのスクロール機構に極小トラックボールを積んで音を出したのが早かったと思いますが)やり方はそれぞれですがどれもヒトの習性みたいなところに訴えかける工夫がされていて、本当に面白いと思います。

以上、とても個性的なSBTのスクロールリング機能ですが、一方で同社製トラックボールの旗艦ExpertMouseは現在も併売されており、操作球横回転式スクロールリングがこの後Kensington社トラックボールの主流を取るのかはわかりません。個人的にはSBTはあくまで別種扱いな気がしますが、本当のところはKensingtonさんに聞いてみないとわかりませんね。

Ballad of a Thin Man

SlimBladeとEM7、横から比較

大玉を搭載したトラックボールはどうしても大型化するものですが、筐体にきつめの傾斜がついているEM7(写真右)と比べてSBTは平坦に近づいており、この点もSBTの大きな利点です。筐体は薄く、操作球は中心より奥に設置されているため、手前側にスペースが生まれ、そこに手のひらを置くことが出来ます。大玉搭載左右対称型をこれ以上薄くするには机に穴掘るしかないのではと思うほど。笑うなかれ。昔は本当に机に穴掘ってトラックボール埋めた人も居たんです。

ボタンと機能割り振り

SlimBladeTrackball上から

SBTのボタンはプラスチックに切れ込みが入れてあるタイプの、最近のマウスなどにも多い筐体の天面部品と一体化した板バネ風となっています。おかげでボタンの面積が広く、クリック可能な領域もその分大きいので、適当に指を叩きつけてもクリック可能というメリットがあります。

反面、板バネ風構造の宿命として、ボタンの押し心地に少し不満が残ります。Kensingtonのトラックボールは代々、ボタンを押しても良し、握っても良し、的に複数方向から押されてもキッチリと反応するよう作ってあるものが多いのですが、SBTのボタンは、上から押す分には問題ありませんが、横方向から握り込むようにクリックするには……。反応してくれますしちゃんと使えますが、構造上プラ素材が歪む感触が含まれるので、壊してしまいそうで一寸不安になります。いや、いくら私の扱い方が荒いからといっても、力任せに握り込んで外装を割ったなんてことはありませんし、そんな事例を聞いたこともありませんけど。

SlimBladeTrackball正面から

また、板バネ風ボタンは、切れ込みに近いところを押す分には問題ないものの、切れ込みから離れれば離れただけ押すのに相応の力が必要になります。どこでもほぼ同じ感覚で押せるEMシリーズのボタンと比べると、パコパコした感触も含めて、少し軽い感じの押し心地になってしまいました。

それでも普通の押し心地は確保してあり、決して悪いわけではないのですが、ExpertMouseは代々ボタンの押し心地がとても良かったもので、どうしても贅沢が口を衝いて出てしまいます。押し心地という意味では別パーツでボタンを構成して欲しかったところですが、見た目的には一体型のほうが整って見えるでしょうし、その端正なところがSBTの特徴だとも思うので、なかなか難しいですね。

素材もツルツルのプラ素材で、私は脂性なのかこの手の素材がボタンに採用されているとクリックする際に指先が一瞬滑るような気がするのと、クリック後に指先がボタンにひっついて「じゅわっ」という感触とともに引き剥がす感じになります。サラサラした梨地プラ素材のボタンだとこの指先に余計にひっついて来る感触がなく、単に手を置いた感触も梨地のほうが好みなのですが、好みの話であって実用上問題が発生しているわけではありません。ツルツル素材でまったく問題ない人も居るでしょう。

以上、SBTのボタンの感触についてでしたが、これ、かなり無理矢理というか、相当細かい話を述べています。普通に使う分にはこんなこと気にする人居ないと思いますし、私も普通に使う分にはほとんど気にしたことありません。こんなサイト作ろうと思い立ったのが間違いの始まりで、なんか書かなきゃと思っているうちに「そういえば……」みたいな感じで捻り出してきた話。気にする必要はまずないと思います。

ちなみに、私は一度ボタン(内部のスイッチ)を壊しています。他のページでも触れたことがありますが私はとにかくボタンを壊す人間なので「私の使い方が悪い」と自覚しています。その時は保証期間内だったので無償で交換して貰えました。壊れてしまった旨を連絡すると多少のやり取りののちに新品が送られてくるので、壊れたものを着払いで返送することで交換完了となります。こちらの手出しは一切発生しません。保証が厚いメーカーの一般的な対応ですが、ありがたい限りです。

ボタン数はEMシリーズと同じく4、同社製制御ソフトウェア「KensingtonWorks」を利用することで、上2つと下2つに同時押しが設定出来るので、ボタン機能は6となります。

が、ですね。Kensingtonさんトラックボール界では最古参級の老舗なのにソフトウェア方面はいつもルーキーみたいなもんで、上記したKensingtonWorksも、普通に動いてさえくれればまぁそれなりに設定は可能なんですが、マシン環境等のブレに弱いんですかね。そもそも安定して動いてくれないという報告も結構耳にします。

不幸中の幸い、SBTは古い機種ですので、KensingtonWorksより以前の制御ソフトウェアであるところの「TrackballWorks」でも制御が可能です。KensingtonWorksがポンコツルーキーと化してまったく使いもんにならん! という憂き目に遭った人は、TrackballWorksを試すという手も一応あります。公式での配布は終了しており、自分でリスクを負う覚悟の上でということでリンク等は貼れませんが、探せばぼちぼち見つかると思います。

支持球メンテし易さナンバーワン

SlimBladeTrackball操作球口

55㎜操作球を搭載したSBT。操作球は置いてあるだけで固定されていませんので掴んで持ち上げれば簡単に取り外せます。そしてこの取出した後。操作球を保持している支持球周りが円形に盛り上げて整形されていて、これがまー掃除がしやすい。指で軽く撫でるだけでキレイに汚れが取り除けます。各社トラックボールの支持球周りも色々と特徴があって面白かったりするのですが(面白がる人間の絶対数は少ない)発売から10年経過してもメンテのし易さでSBTを超える機種は未だ現れていません。これは本当に素晴らしい。SBT万歳!

そもそも、使用しない限りメンテナンスの機会も訪れないわけですから、使い始める前にその情報を得たとしてだからどうしたの話だろうとは思いますが、私は各機種メンテがしやすいかどうかについてはちょいちょい言及しています。使い始めたらすぐ直面しますからね。

まぁその「使い始める」のハードルをなかなか越えてもらえなくて、あと一歩普及しないわけですけど。トラックボール。

SlimBlade TrackballとEXPERT MOUSEの比較

SBTとEM

どちらもすっかり古株のトラックボールとなってしまった両機種ですがまだまだ健在で、お陰様で地味に質問されるのが「SBTEM7どっちがいいの?」です。「どっちもいいよ」と答えて「駄目だこいつ」という顔をされたことも多いので、少し掘ってみます。

私個人どっちが好きかというとEM7なんですが、他人に薦める場合はSBTを挙げることのほうが多いと思います。私の評価と世間一般の評価が必ずしも一致しない、どころかズレることの方が多いという経験則からそうなっています。

私はボタンの押し心地が好みなのでEM7(Wireless)を利用しています。SBTは上でも述べましたがボタンが私と相性が良くないので後塵を拝していますが、そこを除けばSBTの方が完成度は高いと思います。SBTも好きでメイン機だったこともありますし、SBTしか所有していなければ普通にSBTで何の問題もなく生活しているでしょう。

ただ、完成度が高いことと自分の手に合うかが必ずしも一致しないのがトラックボール、というか入力機器全般そうですね。マウスでもそういうことはあるし。

微差で僅差

この2機種は操作球径も搭載ボタン数もその配置も同じですから、純粋なポインタ制御能力に差はないと思います。ただ、操作球を取り巻く環境、スクロールリングの仕様の違いや本体の傾斜角などが影響して、操球感覚には違いがあります。

SlimBladeTrackball

SBTはこれ以上なく背が低く作られているので、リストレストなどの補助を必要とせず、すぐ使い始められますから、機器そのものの設置方法や取り扱いに多少の調整が必要になることもあるであろうEM7よりも導入が手軽です。有線接続なので電源の管理や無線障害などを心配しなくて良い点も、導入の手軽さと安定運用面で優れています。特に、設置場所があまり広く取れないという人にはSBTでしょうね。

EXPERT MOUSE

EM7も有線版であれば電源と無線障害は気にしなくて良いのですが、無線版の場合は電源の管理と無線環境への多少の配慮は必要になる場合があります。また、無線有線を問わず、リストレストを必要とする設置状況の方が多いと思います。純正リストレストは製品に付属していますが、あれも含めて設置を考えると結構な場所を取ります。それでも腕を動かす必要はないのでマウスより実占有面積は少ないと思いますが、一見するとちょっと引くぐらい大きいと感じる方もいらっしゃることでしょう。

ただ、筐体や操作球が大きいと言っても、扱う手の大きさは問いません。子供の手でも扱えます。これはEM7だけでなくSBTも同じです。

以上を考えると、SBTは即戦力型、EM7は素材型、みたいな感じかな。うーん。なんかそう断言するのもどうかと思うところもあるのですが、今はこれ以外に思いつかないなぁ。有線でいいならSBT、無線が欲しいならEM7の無線版、ぐらい大雑把に考えてもいいんじゃないでしょうかね。どちらもいい機種ですし。

そんな乱暴な言いようでは決められない? 良い解決法がありますよ。両方買うんです。

SlimBlade 魔性のTrackball

以上、色々と文句もつけて来ましたが、正直に申し上げて些末なことです。SBTの本当に凄いところは、特にガジェットだとかトラックボールだとかに興味を持っていない人が、たまたま店頭で見かけるなどして「一目惚れして買ってしまった」という話を、それなりに耳にすることがある点です。

凄くないですか。決して安くはない製品ですよ。それが老若男女を問わず、製品そのものの良し悪しもよく判らぬまま、とにかくその佇まいに心奪われて購入に至ってしまったと。そんな話そうそう聞くことありませんが、SBTは例外なんです。そしてもちろん、そこから長く愛用しているという話に繋がります。

大昔、Turbo/ExpertMouseの時代ならまだそういう話を聞くこともありましたが、2022年現在に至ってなお、魅入られてしまったかのように当該製品を購入した、なんて話は最早SBTぐらいでしか聞きません。良くも悪くも成熟が進み、前例やスペック、偏見で語られることも多くなってしまった今のトラックボール界に、理屈では説明がつかない、魔法がかけられているかのような機種が残っている。私はSBTを「大球トラックボール+++」みたいな存在だと認識しています。チャームの魔法がエンチャントされているとしか思えませんので。

もちろんそういうオカルトじみた話を抜きにした完成度も高く「SBTを手に入れたら、トラックボールを探す旅はそこで終了」と言われることも、まま、あります。それぐらい広く、いろんなところで、いろんな意味で認められたトラックボールですので、例えば初心者だからとか他に愛機があるからとかそういう前後の情報はまったく無視してでも、もし多少なりと心惹かれるところがあったなら、入手して大損することはないトラックボールだと言えます。私はあまりその辺断言はせず「人による」「相性次第」とお茶を濁すのが好きな卑怯者ですが、SBTに関してはまぁ、割と安心して薦めることが可能なトラックボールだと思っています。

Turbo/ExpertMouseは代々そういう製品だったのですが、その「魔力」方面に関しては、後継者である現行のEM7にはあまり受け継がれず、こちらSBTが受け継いだ感があります。製品名こそ違いますが開発中はEM8と呼ばれていた、なんて噂も耳にしたことありますし。一方EM7はご先祖が持っていたもう一つの顔、実直さだとか確実性みたいなのを受け継いだイメージでしょうか。私はその、Kensington社の旗艦機がかつて持っていた重要な要素であるところの「魔力」を受け継がせてもらえなかった辺りで表現しようのない切なさを感じてどーしてもEM7に感情移入している節があります。はい。伝説の王の血を引く後継者なんだけど、歴代の王が使えた魔法が使えない。それを口さがない王国民から揶揄されながらも、健気に一族の宿命と向き合い続けるEM7。その苦悩いかばかりか。

なんて妄想を、それもSBTが主役の頁で垂れ流すなど言語道断ですね。決してEM7を否定はしませんが、余程のことがない限りはSBTの入手をお薦めして間違いは起きないでしょう。くっ。テキスト打ってるだけなのに何故こんなに胸が痛いんだ。罪作りな存在だよまったく。スリムブレイド トラックボール。

SlimBlade Trackball

なお、同じSlimBlade名を冠し、スクロールホイール部に小型トラックボールを搭載した「SlimBlade Trackball Mouse with Bluetooth Wireless」も発売されており、実は私それもお気に入りでかなり愛用していました。スクロールホイール部をトラックボールにするという考え方は過去にも存在したのですが、SlimBlade Mouseはそれら同族の中でも私が知る限り最も完成度の高い製品でした。おまけに当時はまだ珍しかったBluetooth接続!

ということで、そのSBTM w/BWをトラックボールモードで使用して壺のおじさんを登頂させるべく挑んでみました。興味のある方は是非どうぞ。

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